2020年5月20日水曜日

耐越水シートの開発⑭ (透気・防水性シートとの比較)

 耐越水対策の選択肢として、「透気・防水性シート」がある。

 遮水シートを裏法面に敷設した場合、提体内の湿潤面の上昇に伴い間隙空気の排出が阻害され、エアブローが発生して堤防が弱体化する可能性があるという。

 また、降雨水が提体に浸透すると、越水で侵食されやすくなるという。

 透気・防水性シートは、これらの問題を解消するための方法として、下のイラストのように防水効果や透気効果、侵食防止効果が期待されるものである。

 しかし一方で、次のような課題があることも忘れてはならない。

① 透気・防水性シートは、川表と川裏の双方に敷設しないと効果が発揮できない。
② 危機管理型ハード対策として施工された法尻ブロックの下に敷かれた吸出し防止シートを貼り替える必要がある。
③ 川底の地層から提体内に浸透する河川水は排水できないので、提体の弱体化を招く可能性がある。
④ 相当の水密性が求められるので、継ぎ目の加熱溶着は完璧な施工が求められる。
⑤ シート上には覆土が必要で、覆土の施工中にシートに損傷を与える可能性がある。
⑥ 覆土することにより、シートの点検が難しくなる。
⑦ 透気・防水性シート上を雨水が流れて、シートが滑り面になり「法すべり」が発生しやすくなって覆土が滑り落ちる可能性がある。

⑧ 透気・防水性シート上に覆土した場合に、排気ができなくなる可能性がある。

昨年の台風第19号で決壊した、140箇所の国と県が管理する堤防のうち、浸透が決壊原因と考えられるのは2箇所のみのレアケースとなっているし、エアブローが提体の強度に与える影響が、科学的に十分に解明されていない状況のなか、透気・防水対策にどこまで対応するかが、今後、河川管理者の判断に委ねられる。


透気・防水性シートの効果のイメージ図