2021年9月2日木曜日

耐越水シートの開発⑳ (国交省の検討方針 ~その2~)

 令和3年3月14日に開催された土木学会の基礎水理シンポジウムで、国内の越水対策のリーダーのひとりでもある、国土交通省の国総研河川研究室長の福島雅紀氏は、現在検討中の粘り強い河川堤防の構造は下図のように、①表面被覆型、②断面拡大型、③一部自立型の3種類だとしている。

 国総研は令和2年10月に、大学や企業を対象として「越水に対する河川堤防の強化構造の検討に資する評価技術の開発」というテーマで、技術開発を公募した。予算は2年間で2000万円を上限とするものであるが、7件の応募があり東京工業大学、京都大学、(株)富士ピー・エスの3者の研究テーマが採択された。

 裏法面をブロックやシートで覆う「表面被覆型」では、京都大学の肥後陽介教授が越流侵食の粘り強さの評価手法と、実装フレームワークの開発を2年かけて行うこととなった。この成果を基にしてブロックやシートなどの効果実証が進められる予定だ。

「表面被覆型」は、ブロック、シート、かご、改良土、張芝等の資材で堤防裏法面の侵食を遅らせて、粘り強い堤防を実現しようとするものだが、前述(耐越水シートの開発⑲)の国交省の検討会資料では、ブロック、シートのみが表示されており、真意は不明だ。

 全国の直轄や自治体管理の膨大な延長の河川を対象に、粘り強い堤防を短期間で整備することが喫緊の課題となっているが、そのためには構造をシンプルにして施工性を向上させ、かつコストを抑え、さらに景観との調和や維持管理のしやすい工法を選択することが求められる。もちろん、一定の耐侵食性能を兼ね備えて粘り強さを発揮できることは越水対策の基本でもある。