国内の河川のうち、川表を天端までブロックを張っている堤防は少ない。
低水護岸であればある程度はブロック張が整備されているが、高水護岸をコンクリートで覆っているのはそれほど多くない。予算確保が難しいからだろう。
越水対策の最もポピュラーな案は、川裏を連節ブロックなどで法尻から天端まで覆ってしまう方法だ。すでに越水対策のパイロット工事と称して全国の16か所の堤防で国交省が試験施工している。
ふと思うのは、川表は土羽護岸のままでいいのだろうかということ。
表と裏、どちらを優先にすべきか。もちろん表も裏もコンクリートで覆えれば問題はないのだが、心配なのは予算だ。
国交省の治水課が開催している越水対策の検討会は、昨年の5月20日に1回目の会合を開いたが、その後はパタリと動きが止まった。代わりに国交省所管の国土技術研究センターが、民間や大学を対象に越水対策技術を募集するための要綱案について意見募集することになった。
募集要項案には天端、川裏の法面と法尻についてパッケージで対策案を求めるとしている。川表の護岸は、すでにコンクリートで覆っているという前提条件だ。
しかし、実際は国交省が管理する河川でも川表の土羽護岸は多い。洪水の洗礼をうけるのは川表の護岸だが、それさえも予算が足りなくて土羽護岸で我慢している状態なのに、越水対策のために川裏をコンクリートブロックで覆うことが予算的に可能なのだろうか。
堤防は洪水をせき止めるために整備したのだから、すべての堤防は越水する可能性があることになる。膨大な延長の堤防を、川表と川裏をコンクリートで覆い、天端を舗装するだけの予算をどこから捻出するのだろうか。募集要綱案を考えた方は、当然ながらその算段をした上で提案したのだと思いたい。
仮に、川表を土羽護岸のままにして、川裏だけ立派な連節ブロックで覆うというのはいままで見たことがなく大きな違和感を伴う。
堤防の川表の多くは土羽護岸が多い。表も裏もコンクリートで覆うとなると、いろいろ問題が出てきそうな気がする。