2023年7月18日火曜日

堤防でイタドリの成長抑制の試験施工を行う(1) (堤防のイタドリ・ブタクサ・セイヨウカラシナ・セイタカアワダチソウ・セイバンモロコシ・アレチウリ・モグラ・キツネ・イノシシ対策に挑む)

 河川の堤防で、令和5年1月にイタドリの成長抑制をめざした試験施工を国交省が行った。

 ジオネットは私が特許を得た1mmメッシュで端部が折り返し加工されたものを使用する。(タキロンシーアイシビル社製の「強害雑草抑制ネット」)

 ジオネットの継目を単純に重ね合わせただけにすると、イタドリが継目の隙間から萌芽するからだ。イタドリはどんなに狭い隙間でも這い出してくる。

   試験施工は国交省側の都合で1月になった。
 厳寒期の1月に野芝を張って、はたして芝が活着できるだろうかと心配だった。

 試験施工は3パターンで行われた。
 パターン①は堤防法面を15cm掘削して、良質土を15cm補充。法面整形をしてからジオネットと野芝を張るケースで、恒久的にイタドリの成長抑制をめざすものだ。

 パターン②は、堤防法面を50cm掘削し、段切りをして良質土でもとの高さまで盛土し、法面整形をしてからジオネットと野芝を張るケース。これも恒久対策になる、

 パターン③は、堤防法面を50cm掘削し、段切りをして良質土でもとの高さまで盛土し、法面整形をして野芝を張るケース。このパターンは以前から各現場で行われている従来型の芝の張替え手法だ。

 イタドリは深さ2mのところにも地下茎を張り巡らすことがあり、地下茎を少しでも取り残すと、残った地下茎から芽を伸ばし3~4年後には再繁茂する。したがって従来の工法は恒久的な対策にはならない。この試験施工がめざすのは恒久的な予防保全である。
 
 今回の試験施工では、次の項目の検証ができると期待している。

①折り返した継目の効果
②コの字型のアンカーピンの是非
③ジオネットのイタドリの成長抑制効果
④モグラの防止効果
⑤芝がジオネット上で生育の可否
⑥適正な掘削深さの確認
⑦施工上の問題点
⑧除草量や除草回数の逓減効果

 
 何もしないで黙っていても、新しい技術は生まれない。
 試験施工で多くの知見が得られれば、その分だけイタドリの成長抑制技術は確実に進化する。
 国交省が私の提案する恒久的な予防保全対策に期待して、試験施工してくれたのはとてもありがたく技術者冥利の極みである。

イタドリ根っ止のカタログ → https://www.kensetsu-plaza.com/catalog/post/49352

 ジオネットの貼り付け作業。継目にコの字型アンカーピンを打ち込んだ。コの字型アンカーピンだと、ジオネットが破れにくい。
 別の現場でU字型アンカーピンを使ったところ、ピンがだんだん狭くなっていくので、ジオネットが破けてしまった。イタドリはこの破れた箇所から確実に芽を伸ばす。アンカーピンはコの字型でないといけない。
梯子を使ったジオネットの貼り付け作業は、足を踏み外し易いので難しくなる。足場板をこの図のように加工した作業足場が必要だということが分かった。
手前がパターン①、奥が②と➂。②と➂は土を50㎝入れ替え、段切りもしたので、イタドリの芽がまだ地上に到達していない。手前のパターン①は15㎝の入れ替えなのでイタドリの地下茎が温存されていて、発芽が多くあった。しかし、通常であれば1m以上に伸びるイタドリは、5~20㎝に成長が抑制されている。
パターン①のエリアで発芽したイタドリ。撮影は7月7日。イタドリは発芽してもジオネットで成長が抑制されている。この程度だと、堤防点検には支障がないので、ジオネットの効果があったといえる。今後、秋までにどれ程まで伸びるのか、来夏はどうなるのかを観察していくことになる。
試験施工で使用したジオネットの継ぎ目は嵌合式(嚙合わせる方式)なので、隙間が発生しない。隙間がないとイタドリは侵入できないし、侵食もされにくくなる。施工も楽になるというメリットがある。北海道開発局旭川開発部では本格的に実装施工している。    

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