2020年1月27日月曜日

堤防の強靭化を実施 ②

イタドリなどの繁殖力は、想像以上に強い。

ジオネットの重ね合わせ部に僅かな隙間がっても、そこからイタドリの芽が伸びだす。
  
ジオネットの重ね合わせ幅を20㎝ほど確保したが、下の写真のように問題なく芽が伸びてしまうので、隙間ができないような工夫が必要である。

隙間を無くす方法は、簡単で低コストであることが望まれる。  
  

ジオネットの隙間から伸びたイタドリの芽 

2020年1月13日月曜日

堤防の強靭化を実施 ①

 昨年(令和元年)の5月、イタドリが繁茂する石狩川と忠別川で、「植生保護シート(ジオネット)」の上に3㎝の客土吹き付けを行う工事が行われた。
 発注者は北海道開発局旭川河川事務所である。
 私が発案したジオネットによる堤防強靭化工事の第1号と第2号である。2件の工事で約2万m2が施工された。

 北海道のイタドリは背丈が3mまで伸び、東北のものよりも一回り大きく成長する。背丈が高くなったイタドリは、除草機の刃の摩耗が激しく除草の効率を下げる。葉っぱの量が多いので、除草量が嵩む原因にもなる。
 牛はイタドリを食べないので、刈草を畜産農家に提供するときには、イタドリを除去しなければならない。
 
 イタドリには、アレロパシー(ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出すること)の能力があるので、イタドリの周辺は裸地化する。草が生えない裸の地面に降雨が当たるとガリ侵食が発生したり、越水流で堤防の地肌が侵食されやすくなる。これが堤防浸食を招くことになる。

 また、イタドリが繁茂する堤防にはモグラも住み着きやすいと言われる。モグラが掘った穴で4年前に宮城県の渋井川が破堤したこともある。堤防の植生管理は重要で、奥が深い。
 
 ジオネットはイタドリの成長を抑制するだけではない。ジオネットは1mm四方に加工された網だが、この密度は野芝の根よりも緻密だ。緻密なジオネットは堤防の法面の侵食を遅らせることができる。モグラも住み着くことはできない。

 ジオネットによる堤防の強靭化が、北海道から始まっている。
北海道の忠別川におけるジオネットの張り付け作業。重ね合わせ部を特殊加工したので、敷設作業がしやすくなった。(2019年5月)

2020年1月6日月曜日

越水による裏法面の洗堀

 台風19号の直後の10月15日、宮城県大郷町の吉田川の支流の善川へ行ってみた。
 下流の吉田川では越水が原因で破堤し、寺や民家が流され大きな災害となった。総理大臣が2度も視察に来るほどだった。
  
 写真は善川の右岸の1.8㎞の堤防。法肩から40~50㎝下がった辺りが、越水で洗堀されている。法尻には侵食の形跡は見られなかった。

 国交省では越水しても破堤に至るまでの時間を少しでも伸ばそうと、5年計画で堤防の裏法面の法尻をブロックで補強する工事を進めている。しかし、善川では法尻ではなく法肩付近が洗堀されていた。

 そこで思い出すのは、東京理科大学の二瓶教授が行った水理実験。
 水理実験と同じような現象が、現場でも発生していた。

 国交省では台風19号の甚大な被害を踏まえ、「気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会」を設け、今年の夏ごろをめどに、検討会を開催し堤防強化の方向性を示す予定である。
 
 堤防決壊の原因の7~8割が越水といわれる。すべての堤防を嵩上げするには膨大な予算が必要で、とても無理かもしれない。
 どのような方針が出されるかが、専門家やマスコミなどから注目されている。
東京理科大学の実物大での越水破堤の実験状況。の裏法面の法肩が深く洗堀されている。

台風19号で善川が越水し、法肩が洗堀されていた。東京理科大学の実験と同様の現象となった。