国土交通省は令和2年6月12日に、「令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会」(座長・山田正中央大理工学部教授)の第3回の会合を行い今後の越水対策の方針案を議論した。その中で「緊急的・短期的な河川堤防の強化方策の方向性」として、下記のような方針が示された。
検討会は今後の越水対策について、「越水した場合であっても堤防が決壊するまでの時間を少しでも引き延ばす」という、現行の危機管理型ハード対策の概念を発展的に踏襲し、さらなる引き延ばし効果を有する「粘り強い河川堤防」を目指すべきだと結論づけた。
下の表は、国交省が検討会の意見をイメージ化したもので、最下段の部分が検討会の目指す「粘り強い河川堤防」になる。
表中の赤枠の「粘り強い河川堤防」には、危機管理型ハード対策としての天端舗装と裏法尻補強の間に、新たに被覆工が施されている。この表の被覆工はブロックやシートだと明記されており、これらにより粘り強さが向上し、危機管理型ハード対策(天端舗装+法尻ブロック)よりも、決壊するまでの時間を延ばすことを目指す。決壊するまでの時間を引き延ばすことができれば、その分だけ避難活動の時間が増え、被害の拡大を防止できるからだ。
つまりは、越水対策の大原則は、洪水時の河川水位を下げることではあるが、この大原則の解消が当面困難な箇所においては、ブロックやシートなどで堤防をより粘り強くして、決壊までの時間を延ばすことを目指すという。
危機管理型ハード対策は平成28年度から5ヶ年計画で、全国の直轄が管理する河川を対象に天端舗装が1310㎞、法尻ブロック補強が630㎞計画され、全国各地で急ピッチで整備が進められた。膨大な予算を投じて先行的に整備されたこれらの施設は、当然ながら今後の越水対策にも活用されることが重要であるから、緊急的・短期的な取り組み手法は、危機管理型ハード対策として整備された、法尻ブロックを大幅に改変しない構造で検討することか望まれるのである。
国土交通省の検討会の資料。表は危機管理型ハード対策と粘り強い河川堤防の違いを示している。この表の右下には小文字で「ブロック・シートによる法面保護工により粘り強さが向上し、決壊に至るまでの時間を長くするなどの減災効果を発揮」と今後の方向性が示されている。
国交省に40年間在職し、堤防の厄介モノであるイタドリやセイタカアワダチソウを、ジオネットと呼ばれる樹脂製の網で、恒久的に成長を抑制するコスト削減手法を開発。ジオネットはモグラやキツネの防止、越水による侵食の防止効果もあり、堤防の強靭化に貢献できます。 また、従来の5分の1程度のコストや電力量で融雪効果が発揮できる、超省エネ型ロードヒーティング(別名ライン型ロードヒーティング)も開発。この二つの技術をメインに、技術士としての残り少ない日々の想いを綴って技術伝承し、少しでも社会に貢献できればと願っています。 (連絡先 atk.shimazu@gmail.com)
2021年8月25日水曜日
2021年8月11日水曜日
耐越水シートの開発⑱ (体験実習施設として導入)
国土交通省の東北地方整備局河川部は、河川管理担当者等を対象に点検技術の向上に役立ててもらおうと、令和元年に東北技術事務所の構内へ、堤防や樋門などの体験型実習施設を整備した。
それぞれの施設には、ひび割れや法崩れなどの変状や異常があらかじめいくつかセットされていて、河川管理者だけでなく、設計コンサルタントや建設会社の社員なども体験学習できるようになっており、写真撮影した時にも自治体の職員が研修していた。
下の写真は、堤防の構造が理解しやすいように堤防断面を現わしたものだが、芝の下に敷かれている黒いシートが、耐越水シートと同じ1mmメッシュの高密度ポリエチレン製の網のジオネットである。 (メーカーのタキロンシーアイシビルでは「ネトロンシート」と呼んでいる、NETIS KT-180089-A )
ただし、東北技術事務所がジオネットを導入したのは、イタドリやセイタカアワダチソウなどの強害雑草の成長を抑制して、堤防除草の回数を減らすのが目的。これにより堤防の点検がしやすくなる効果もある。つまり、ジオネットは雑草の成長抑制と耐越水性の両方の効果が期待できるのである。
芝はトヨタが開発したTM-9と呼ばれる改良芝が張られている。単価は通常の倍ほどするが草丈は通常の半分以下という。ネトロンシートと張芝の施工単価は経費込みで3500円程度ですむ。
越水対策には以下の課題の克服が求められ、今後、国土交通省の治水課、国総研や土木研究所、国土技術研究センターなどが関係業界団体やメーカー、学会、大学などと情報交換をして知恵を絞りながら、表面被覆型(ブロックやシートなど)や断面拡大型、一部自立型の3種類について研究がすすめられることとなっている。
①、粘り強さの向上
②、維持管理の容易性
③、施工性
④、提体との一体性やなじみ
⑤、不同沈下に対する修復の容易性
⑥、損傷時の修復の容易性
⑦、環境・景観との調和
⑧、低コスト
⑨、危機管理型ハード対策を活かすこと、
東北技術事務所の堤防の体験実習施設。法面の一部では点検技術の向上のため、ジオネットを外してイタドリがわざと植えてある。施工後2年経過したが、今のところ除草はしていないものの、セイタカアワダチソウやヨモギなどの雑草をコントロールできており、除草不要のメンテナンスフリーが続いている。
それぞれの施設には、ひび割れや法崩れなどの変状や異常があらかじめいくつかセットされていて、河川管理者だけでなく、設計コンサルタントや建設会社の社員なども体験学習できるようになっており、写真撮影した時にも自治体の職員が研修していた。
下の写真は、堤防の構造が理解しやすいように堤防断面を現わしたものだが、芝の下に敷かれている黒いシートが、耐越水シートと同じ1mmメッシュの高密度ポリエチレン製の網のジオネットである。 (メーカーのタキロンシーアイシビルでは「ネトロンシート」と呼んでいる、NETIS KT-180089-A )
ただし、東北技術事務所がジオネットを導入したのは、イタドリやセイタカアワダチソウなどの強害雑草の成長を抑制して、堤防除草の回数を減らすのが目的。これにより堤防の点検がしやすくなる効果もある。つまり、ジオネットは雑草の成長抑制と耐越水性の両方の効果が期待できるのである。
芝はトヨタが開発したTM-9と呼ばれる改良芝が張られている。単価は通常の倍ほどするが草丈は通常の半分以下という。ネトロンシートと張芝の施工単価は経費込みで3500円程度ですむ。
越水対策には以下の課題の克服が求められ、今後、国土交通省の治水課、国総研や土木研究所、国土技術研究センターなどが関係業界団体やメーカー、学会、大学などと情報交換をして知恵を絞りながら、表面被覆型(ブロックやシートなど)や断面拡大型、一部自立型の3種類について研究がすすめられることとなっている。
①、粘り強さの向上
②、維持管理の容易性
③、施工性
④、提体との一体性やなじみ
⑤、不同沈下に対する修復の容易性
⑥、損傷時の修復の容易性
⑦、環境・景観との調和
⑧、低コスト
⑨、危機管理型ハード対策を活かすこと、
東北技術事務所の堤防の体験実習施設。法面の一部では点検技術の向上のため、ジオネットを外してイタドリがわざと植えてある。施工後2年経過したが、今のところ除草はしていないものの、セイタカアワダチソウやヨモギなどの雑草をコントロールできており、除草不要のメンテナンスフリーが続いている。
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