2021年8月25日水曜日

耐越水シートの開発⑲ (国交省の検討方針 ~その1~)

 国土交通省は令和2年6月12日に、「令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会」(座長・山田正中央大理工学部教授)の第3回の会合を行い今後の越水対策の方針案を議論した。その中で「緊急的・短期的な河川堤防の強化方策の方向性」として、下記のような方針が示された。

 検討会は今後の越水対策について、「越水した場合であっても堤防が決壊するまでの時間を少しでも引き延ばす」という、現行の危機管理型ハード対策の概念を発展的に踏襲し、さらなる引き延ばし効果を有する「粘り強い河川堤防」を目指すべきだと結論づけた。

 下の表は、国交省が検討会の意見をイメージ化したもので、最下段の部分が検討会の目指す「粘り強い河川堤防」になる。

 表中の赤枠の「粘り強い河川堤防」には、危機管理型ハード対策としての天端舗装と裏法尻補強の間に、新たに被覆工が施されている。この表の被覆工はブロックやシートだと明記されており、これらにより粘り強さが向上し、危機管理型ハード対策(天端舗装+法尻ブロック)よりも、決壊するまでの時間を延ばすことを目指す。決壊するまでの時間を引き延ばすことができれば、その分だけ避難活動の時間が増え、被害の拡大を防止できるからだ。

 つまりは、越水対策の大原則は、洪水時の河川水位を下げることではあるが、この大原則の解消が当面困難な箇所においては、ブロックやシートなどで堤防をより粘り強くして、決壊までの時間を延ばすことを目指すという。

 危機管理型ハード対策は平成28年度から5ヶ年計画で、全国の直轄が管理する河川を対象に天端舗装が1310㎞、法尻ブロック補強が630㎞計画され、全国各地で急ピッチで整備が進められた。膨大な予算を投じて先行的に整備されたこれらの施設は、当然ながら今後の越水対策にも活用されることが重要であるから、緊急的・短期的な取り組み手法は、危機管理型ハード対策として整備された、法尻ブロックを大幅に改変しない構造で検討することか望まれるのである。
 
 
 国土交通省の検討会の資料。表は危機管理型ハード対策と粘り強い河川堤防の違いを示している。この表の右下には小文字で「ブロック・シートによる法面保護工により粘り強さが向上し、決壊に至るまでの時間を長くするなどの減災効果を発揮」と今後の方向性が示されている。

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