2021年8月11日水曜日

耐越水シートの開発⑱ (体験実習施設として導入)

 国土交通省の東北地方整備局河川部は、河川管理担当者等を対象に点検技術の向上に役立ててもらおうと、令和元年に東北技術事務所の構内へ、堤防や樋門などの体験型実習施設を整備した。
 それぞれの施設には、ひび割れや法崩れなどの変状や異常があらかじめいくつかセットされていて、河川管理者だけでなく、設計コンサルタントや建設会社の社員なども体験学習できるようになっており、写真撮影した時にも自治体の職員が研修していた。

 下の写真は、堤防の構造が理解しやすいように堤防断面を現わしたものだが、芝の下に敷かれている黒いシートが、耐越水シートと同じ1mmメッシュの高密度ポリエチレン製の網のジオネットである。 (メーカーのタキロンシーアイシビルでは「ネトロンシート」と呼んでいる、NETIS KT-180089-A )

 ただし、東北技術事務所がジオネットを導入したのは、イタドリやセイタカアワダチソウなどの強害雑草の成長を抑制して、堤防除草の回数を減らすのが目的。これにより堤防の点検がしやすくなる効果もある。つまり、ジオネットは雑草の成長抑制と耐越水性の両方の効果が期待できるのである。

 芝はトヨタが開発したTM-9と呼ばれる改良芝が張られている。単価は通常の倍ほどするが草丈は通常の半分以下という。ネトロンシートと張芝の施工単価は経費込みで3500円程度ですむ。

 越水対策には以下の課題の克服が求められ、今後、国土交通省の治水課、国総研や土木研究所、国土技術研究センターなどが関係業界団体やメーカー、学会、大学などと情報交換をして知恵を絞りながら、表面被覆型(ブロックやシートなど)や断面拡大型、一部自立型の3種類について研究がすすめられることとなっている。
①、粘り強さの向上
②、維持管理の容易性
③、施工性
④、提体との一体性やなじみ
⑤、不同沈下に対する修復の容易性
⑥、損傷時の修復の容易性
⑦、環境・景観との調和
⑧、低コスト
⑨、危機管理型ハード対策を活かすこと、

東北技術事務所の堤防の体験実習施設。法面の一部では点検技術の向上のため、ジオネットを外してイタドリがわざと植えてある。施工後2年経過したが、今のところ除草はしていないものの、セイタカアワダチソウやヨモギなどの雑草をコントロールできており、除草不要のメンテナンスフリーが続いている。

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