国土交通省が管理する江合川の試験施工箇所の9月29日時点の状況。
前回の観察日は8月16日だったので、それから約40日経過している。
試験施工エリアのイタドリは、8月の時は葉っぱが青かったが、今回はほとんどが色づいている。中には枯れてしまい幹しか残っていないものもある。一方で試験施工エリア外のイタドリは葉の青いのが多く残っている。
どうして同じ季節で、枯れたり色づくイタドリと、青青と元気なイタドリがあるのだろうか?
ジオネット越しに生えたイタドリは維管束が1mmと細くなるので、葉緑素で作ったデンプンを地下に送ることができなくなる。
維管束は、根から吸い上げた水分や養分が通る道管(どうかん)と、葉でつくられた栄養分が全身に運ばれるための師管(しかん)がたくさん集まって束になっているところだが、目合いが1mmのジオネットがボトルネックになって、それ以上太ることができないのだ。
イタドリは地下の深いところに地上で生成された養分を貯めておく「貯蔵根」があり、春になると地上部の発芽のために「貯蔵根」から養分が輸送される。その役目を担うのが維管束である。人間で例えるならば臍の緒ということになる。
臍の緒がジオネットで1mm以下に狭められると、地中と地上との水分や養分の輸送が困難になり、地上のイタドリは大きくなれない。葉から送られてくる養分はジオネットの上部のイタドリの根に貯めるしかないから大きく成長することはできない。
ジオネットの上の厚さ1㎝程度の土壌では、盆栽鉢の植物のように成長が難しいはずだ。来夏、イタドリがどうなるかを興味深く観察するつもりだ。
江合川の試験施工の状況。(2023.9.29) ジオネットを通り抜けて萌芽したイタドリたちは殆ど枯れてしまっている。野芝の下に敷いたジオネットがイタドリの成長を抑制していることが確認できた。この効果が何年続くのか、長期スパンでの観察を続けるつもりだ。
枯れたイタドリの幹。周りのイタドリはまだ枯れてはいないのに、なぜ、早々と枯れてしまったのか謎である。来夏、枯れたイタドリの根元から新たに萌芽すると思われるが、その後、どのように成長するのかを見極めたい。
国交省に40年間在職し、堤防の厄介モノであるイタドリやセイタカアワダチソウを、ジオネットと呼ばれる樹脂製の網で、恒久的に成長を抑制するコスト削減手法を開発。ジオネットはモグラやキツネの防止、越水による侵食の防止効果もあり、堤防の強靭化に貢献できます。 また、従来の5分の1程度のコストや電力量で融雪効果が発揮できる、超省エネ型ロードヒーティング(別名ライン型ロードヒーティング)も開発。この二つの技術をメインに、技術士としての残り少ない日々の想いを綴って技術伝承し、少しでも社会に貢献できればと願っています。 (連絡先 atk.shimazu@gmail.com)
2023年10月11日水曜日
2023年10月3日火曜日
堤防でイタドリの成長抑制の試験施工を行う(4) (堤防のイタドリ・ブタクサ・セイヨウカラシナ・セイタカアワダチソウ・セイバンモロコシ・アレチウリ・モグラ・キツネ・イノシシ対策に挑む)
宮城県土木部が管理する広瀬川にはイタドリが繁茂している箇所が多い。草丈は3mに及ぶものもある。
堤防の除草は年に1回。今年は8月の下旬だった。以前は年に2回刈ってくれたが、予算不足で減らされたのだろう。
写真の場所は近所の住人たちの散歩道となっている。夏の暑い日は火照ったアスファルト舗装を避けて、人間や犬たちがこの小径を通る。
しかし、初夏にはイタドリなどが3m近くまで伸び、ジャングルになって小径を塞いでしまいだれも通らなくなる。
3mに成長したイタドリは、幹が樹木のように固くなり鎌では刈れなくなる。数年前から時々ボランティアで草刈りをしていたが、固くなったイタドリで鎌がすぐに切れなくなったり変形してしまう。草刈りを2週間ほどサボっていると、小径はジャングルに変貌してしまう。
草刈りをしなくても、何時でも散歩できるようになれば住民たちが喜ぶだろう。自然のままの広瀬川は気持ちがいい。車を気にしないで自然を堪能できる。河原には木が茂り、せせらぎの音に混じって小鳥たちのさえずりが聞こえる。河川愛護の気持ちも生まれるだろう。それに、堤防点検もスムーズにできるはずだ。
住民から親しまれているこの小径がジャングルにならないようにしたい、そんな想いで昨年(2022年)の春に、堤防の法面にジオネット(タキロンシーアイシビル社製)を敷いた。たった1m四方だけだが、この1年半の間にイタドリは1本も生えてこなかった。ジオネットはイタドリの成長を恒久的に制御できそうだ。
ジオネットは耐侵食性もある。洪水が地面に直接当たらないので侵食されにくくなるのだ。また、草の根がジオネットを通って地面に根を張っているから、根がアンカーピン代わりになって洪水が当たってもネットは簡単には剝がれないだろう。
堤防のすべての法面にジオネットを敷くのは予算的に不可能だが、利用頻度が高い場所や洪水の弱点となるような場所に、限定的に施工することは可能だ。
大事なことは、河川管理者に改善を図ろうとする熱意や情熱があるかどうかだ。
1か月前に除草したものの、イタドリは1mまで再生してしまった。しかし、試験箇所には生えておらず、ジオネットがイタドリを制御していることが分かる。 除草前の小径の状況(6月11日時点)。イタドリは3m近くまで伸びてジャングルのようになっていた。こうなると、カマでの除草は困難だ。散歩だけでなく堤防の点検もできなくなってしまう。(写真中央のカマの長さは1.2m)
堤防の除草は年に1回。今年は8月の下旬だった。以前は年に2回刈ってくれたが、予算不足で減らされたのだろう。
写真の場所は近所の住人たちの散歩道となっている。夏の暑い日は火照ったアスファルト舗装を避けて、人間や犬たちがこの小径を通る。
しかし、初夏にはイタドリなどが3m近くまで伸び、ジャングルになって小径を塞いでしまいだれも通らなくなる。
3mに成長したイタドリは、幹が樹木のように固くなり鎌では刈れなくなる。数年前から時々ボランティアで草刈りをしていたが、固くなったイタドリで鎌がすぐに切れなくなったり変形してしまう。草刈りを2週間ほどサボっていると、小径はジャングルに変貌してしまう。
草刈りをしなくても、何時でも散歩できるようになれば住民たちが喜ぶだろう。自然のままの広瀬川は気持ちがいい。車を気にしないで自然を堪能できる。河原には木が茂り、せせらぎの音に混じって小鳥たちのさえずりが聞こえる。河川愛護の気持ちも生まれるだろう。それに、堤防点検もスムーズにできるはずだ。
住民から親しまれているこの小径がジャングルにならないようにしたい、そんな想いで昨年(2022年)の春に、堤防の法面にジオネット(タキロンシーアイシビル社製)を敷いた。たった1m四方だけだが、この1年半の間にイタドリは1本も生えてこなかった。ジオネットはイタドリの成長を恒久的に制御できそうだ。
ジオネットは耐侵食性もある。洪水が地面に直接当たらないので侵食されにくくなるのだ。また、草の根がジオネットを通って地面に根を張っているから、根がアンカーピン代わりになって洪水が当たってもネットは簡単には剝がれないだろう。
堤防のすべての法面にジオネットを敷くのは予算的に不可能だが、利用頻度が高い場所や洪水の弱点となるような場所に、限定的に施工することは可能だ。
大事なことは、河川管理者に改善を図ろうとする熱意や情熱があるかどうかだ。
1か月前に除草したものの、イタドリは1mまで再生してしまった。しかし、試験箇所には生えておらず、ジオネットがイタドリを制御していることが分かる。 除草前の小径の状況(6月11日時点)。イタドリは3m近くまで伸びてジャングルのようになっていた。こうなると、カマでの除草は困難だ。散歩だけでなく堤防の点検もできなくなってしまう。(写真中央のカマの長さは1.2m)
登録:
投稿 (Atom)