広瀬川の堤防がきれいに除草されていた。
私がイタドリが生えないようにと「雑草抑制ネット」を敷いた箇所は、ありがたいことにその効果を確認できるようにきちんと実験の一画を残していてくれた。
実験区画の除草は春から一度もしていない。
しかし、その一画に1本、セイタカアワダチソウが生えている。
私が開発した「雑草抑制ネット」はイタドリだけでなくセイタカアワダチソウも防止できるはずなのに、高さ1mを超すセイタカアワダチソウが1本、高々と立っている。
一瞬、セイタカアワダチソウの根が「雑草抑制ネット」の網目を破って生育しているのではないかと驚いて根元を良く見ると、根がネットの表面を這って延びていた。
セイタカアワダチソウの根はネットを突き破ることができないので、ネットの上を這いながらネットを敷いていない所まで根を伸ばして養分を吸って生きていたのだ。
セイタカアワダチソウの生命力の強さに脱帽である。
春から一度も除草していないのに、セイタカアワダチソウは例外として雑草の背丈はこの程度で済んでいるのだから、「雑草抑制ネット」は十分、雑草をコントロールできていると思う。
除草した堤防の法面にポツンと実験区画が残されていた。春から除草は一度もしていないが雑草の草丈はセイタカアワダチソウ以外は低く抑えられている。この程度であれば除草は数年に一度の頻度でもいいのではないかと思われる。
実験区画の中に一本だけセイタカアワダチソウが生えていた。これでは「雑草抑制ネット」にならないと心配して近づいてみると……。
なんと、セイタカアワダチソウの根はネットの上を這いながらネットの無い地面まで延びてしっかりと生きていた。
実験で使用した「雑草抑制ネット」。開発者は自分。
メーカーは「タキロンシーアイシビル㈱」
国交省に40年間在職し、堤防の厄介モノであるイタドリやセイタカアワダチソウを、ジオネットと呼ばれる樹脂製の網で、恒久的に成長を抑制するコスト削減手法を開発。ジオネットはモグラやキツネの防止、越水による侵食の防止効果もあり、堤防の強靭化に貢献できます。 また、従来の5分の1程度のコストや電力量で融雪効果が発揮できる、超省エネ型ロードヒーティング(別名ライン型ロードヒーティング)も開発。この二つの技術をメインに、技術士としての残り少ない日々の想いを綴って技術伝承し、少しでも社会に貢献できればと願っています。 (連絡先 atk.shimazu@gmail.com)
2025年10月15日水曜日
2025年7月9日水曜日
堤防でイタドリの成長抑制の試験施工を行う(10) (堤防のイタドリ・ブタクサ・セイヨウカラシナ・セイタカアワダチソウ・セイバンモロコシ・アレチウリ・モグラ・キツネ・イノシシ対策に挑む)
国土交通省の北上川下流河川事務所が管理する江合川で、雑草抑制ネット(タキロンシーアイシビル社製 高密度ポリエチレン製の1mmメッシュのネット)によるイタドリの抑制実験を開始したのが2023年1月。それから2年6か月経過した。
2025年7月4日の午後、現地に到着して効果状況を観察した。
下の写真のAとBのエリアは雑草抑制ネットを敷いているが、Cのエリアはネットを使用しないで堤防を50㎝掘って土を入れ替えて野芝を張った従来工法である。
堤防は6月17日にラジコン除草機械で除草済みだったが、Cのエリアでは、新しいイタドリの芽が30㎝程度に伸びていた。もう2~3年もすれば、元のイタドリのジャングルに戻ってしまいそうである。1m2あたり1万円もかけて芝の張替えをしても、5年ほどで元の木阿弥なのである。
一方で、雑草抑制ネットを敷いたAとBのエリアでは、5~10㎝程度の小さなイタドリがポツリポツリと生えているだけである。昨年よりも数は減ったようであり、草丈も短くなっている。地中にイタドリの地下茎がまだ残っているらしく、細々と生き続けているようだ。
この程度だと堤防の点検作業には支障が無いし、植生維持上でも実害はない。イタドリの恒久対策と位置づけていいだろう。
ネットの上をラジコン除草機械が通ったら、機械が滑って転落するのではないかと心配する諸兄がいたが、野芝が剥げ落ちたり、ネットが露出していないので、この心配は無用だった。
Aのエリアは表土を10㎝入替え法面整形して雑草抑制ネットを敷き、その上に直に野芝を張るのでコストは1m2あたり6~7千円で済む。100年あたりのLCCで比較すると、雑草抑制ネット工法は従来工法の9分の1と極めて経済的である。
さらに、セイタカアワダチソウやヨモギ、ススキなどの繁茂も防止できるし、モグラの営巣も防止できる優れモノなのである。
雑草抑制ネットを使用していないCのエリアには、30㎝程のイタドリの芽が20本近く生えだしていた。 Cのエリアに生えだしたイタドリ。あと2~3年もすれば元のイタドリのジャングルに戻ってしまいそうである。 Cのエリアに生えだしたイタドリ。除草して17日目でもうこれ程大きくなっている。 Cのエリアには草丈が30㎝ものイタドリが20本以上も生えていた。イタドリの占有率は約20%になっている。来年はさらに増えるはずである。 Aのエリアに生えたイタドリ。草丈は5㎝ぐらい。この程度だと堤防の管理上ではまったく問題がないといえる。イタドリの占有率は1%にもなっていない。 この実験で使用した雑草抑制ネット。土の中にあるので直射日光が当たらないので劣化しにくい。
2025年7月4日の午後、現地に到着して効果状況を観察した。
下の写真のAとBのエリアは雑草抑制ネットを敷いているが、Cのエリアはネットを使用しないで堤防を50㎝掘って土を入れ替えて野芝を張った従来工法である。
堤防は6月17日にラジコン除草機械で除草済みだったが、Cのエリアでは、新しいイタドリの芽が30㎝程度に伸びていた。もう2~3年もすれば、元のイタドリのジャングルに戻ってしまいそうである。1m2あたり1万円もかけて芝の張替えをしても、5年ほどで元の木阿弥なのである。
一方で、雑草抑制ネットを敷いたAとBのエリアでは、5~10㎝程度の小さなイタドリがポツリポツリと生えているだけである。昨年よりも数は減ったようであり、草丈も短くなっている。地中にイタドリの地下茎がまだ残っているらしく、細々と生き続けているようだ。
この程度だと堤防の点検作業には支障が無いし、植生維持上でも実害はない。イタドリの恒久対策と位置づけていいだろう。
ネットの上をラジコン除草機械が通ったら、機械が滑って転落するのではないかと心配する諸兄がいたが、野芝が剥げ落ちたり、ネットが露出していないので、この心配は無用だった。
Aのエリアは表土を10㎝入替え法面整形して雑草抑制ネットを敷き、その上に直に野芝を張るのでコストは1m2あたり6~7千円で済む。100年あたりのLCCで比較すると、雑草抑制ネット工法は従来工法の9分の1と極めて経済的である。
さらに、セイタカアワダチソウやヨモギ、ススキなどの繁茂も防止できるし、モグラの営巣も防止できる優れモノなのである。
雑草抑制ネットを使用していないCのエリアには、30㎝程のイタドリの芽が20本近く生えだしていた。 Cのエリアに生えだしたイタドリ。あと2~3年もすれば元のイタドリのジャングルに戻ってしまいそうである。 Cのエリアに生えだしたイタドリ。除草して17日目でもうこれ程大きくなっている。 Cのエリアには草丈が30㎝ものイタドリが20本以上も生えていた。イタドリの占有率は約20%になっている。来年はさらに増えるはずである。 Aのエリアに生えたイタドリ。草丈は5㎝ぐらい。この程度だと堤防の管理上ではまったく問題がないといえる。イタドリの占有率は1%にもなっていない。 この実験で使用した雑草抑制ネット。土の中にあるので直射日光が当たらないので劣化しにくい。
2025年6月11日水曜日
堤防でイタドリの成長抑制の試験施工を行う(9) (堤防のイタドリ・ブタクサ・セイヨウカラシナ・セイタカアワダチソウ・セイバンモロコシ・アレチウリ・モグラ・キツネ・イノシシ対策に挑む)
家の近くを広瀬川の清流が流れている。
ここは河口からおよそ30㎞ほどさかのぼった広瀬川の中流である。
5月になると藤の花が見事に咲き乱れる。川の流れの音に混じってカエルや様々な小鳥たちのさえずりも聞こえる。ここはカエルや小鳥たちの楽園だ。
舗装していない土と草の野道を歩くのはとても気持ちがいい。周辺の住人達もこの径を散歩しているようだ。径は20㎝ほどの幅で踏み固められていてぬかるみはなく、気持ちよく歩くことができる。
しかし、イタドリはこんなところにも容赦なく繁茂する。中には丈が3mを超すものもある。
イタドリは除草しても次から次と繁茂を続ける。2週間も除草しないと人が歩けなくなる。下の写真はイタドリで覆いつくされた散歩道だ。
数年前から下の写真のように毎週、鎌で堤防の草刈りをしている。草刈り幅は1.5mと狭いが、散歩するには十分な幅だ。それに草刈り後の青草の生気に満ちた匂いが気に入っている。草刈りの匂いは子供のころの運動会のグランドの匂いである。
しかし、草刈りを2週間ほどさぼると、またもとのジャングルに戻ってしまう。
堤防などに様々な雑草が生える中で、イタドリやセイタカアワダチソウほど、成長が早く大きくなる草はない。つまり、イタドリやセイタカアワダチソウをコントロールできれば、除草作業は大幅に軽減できることになる。
そんな思いから、3年前、わずか1.5m四方の規模ではあるが、タキロンシーアイシビル社製の雑草抑制ネットを敷設した。
そのネットの上にホームセンターから買ってきた、半分枯れかけた高麗芝を張ったが全滅して枯れてしまったものの、イタドリの萌芽はまったくなくなった。
景観上の違和感もない。
国土交通省の北海道開発局では、こうした取り組みが年に数万m2規模で実践されているとのことである。北海道のイタドリは本州のものよりも太く、草丈が高い。さらに至る所に繁茂している。
黒いネットシートがタキロンシーアイシビル社製の雑草抑制ネット。継目から雑草が萌芽できないようになっている。
ピンクのリボンのある位置がタキロンシーアイシビル社製の雑草抑制ネットを敷設した場所。イタドリの繁茂は完璧に制御できている。ネットは露出していないので違和感もない。 ネットシートの端部を折り返し加工してあるので、ネットシートの隙間からイタドリが萌芽することはできなくなっている。(特許製品) 旭川開発建設部では、雑草抑制ネットを活用して大規模な堤防法面補修工事を行っている。この結果、イタドリだけでなくセイタカアワダチソウの防止にも効果が発揮されている。また、モグラの巣穴もなくなったとのことである。さらに、越水に対しても相当な耐侵食性を発揮できる可能性がある。
ここは河口からおよそ30㎞ほどさかのぼった広瀬川の中流である。
5月になると藤の花が見事に咲き乱れる。川の流れの音に混じってカエルや様々な小鳥たちのさえずりも聞こえる。ここはカエルや小鳥たちの楽園だ。
舗装していない土と草の野道を歩くのはとても気持ちがいい。周辺の住人達もこの径を散歩しているようだ。径は20㎝ほどの幅で踏み固められていてぬかるみはなく、気持ちよく歩くことができる。
しかし、イタドリはこんなところにも容赦なく繁茂する。中には丈が3mを超すものもある。
イタドリは除草しても次から次と繁茂を続ける。2週間も除草しないと人が歩けなくなる。下の写真はイタドリで覆いつくされた散歩道だ。
数年前から下の写真のように毎週、鎌で堤防の草刈りをしている。草刈り幅は1.5mと狭いが、散歩するには十分な幅だ。それに草刈り後の青草の生気に満ちた匂いが気に入っている。草刈りの匂いは子供のころの運動会のグランドの匂いである。
しかし、草刈りを2週間ほどさぼると、またもとのジャングルに戻ってしまう。
堤防などに様々な雑草が生える中で、イタドリやセイタカアワダチソウほど、成長が早く大きくなる草はない。つまり、イタドリやセイタカアワダチソウをコントロールできれば、除草作業は大幅に軽減できることになる。
そんな思いから、3年前、わずか1.5m四方の規模ではあるが、タキロンシーアイシビル社製の雑草抑制ネットを敷設した。
そのネットの上にホームセンターから買ってきた、半分枯れかけた高麗芝を張ったが全滅して枯れてしまったものの、イタドリの萌芽はまったくなくなった。
景観上の違和感もない。
国土交通省の北海道開発局では、こうした取り組みが年に数万m2規模で実践されているとのことである。北海道のイタドリは本州のものよりも太く、草丈が高い。さらに至る所に繁茂している。
黒いネットシートがタキロンシーアイシビル社製の雑草抑制ネット。継目から雑草が萌芽できないようになっている。
ピンクのリボンのある位置がタキロンシーアイシビル社製の雑草抑制ネットを敷設した場所。イタドリの繁茂は完璧に制御できている。ネットは露出していないので違和感もない。 ネットシートの端部を折り返し加工してあるので、ネットシートの隙間からイタドリが萌芽することはできなくなっている。(特許製品) 旭川開発建設部では、雑草抑制ネットを活用して大規模な堤防法面補修工事を行っている。この結果、イタドリだけでなくセイタカアワダチソウの防止にも効果が発揮されている。また、モグラの巣穴もなくなったとのことである。さらに、越水に対しても相当な耐侵食性を発揮できる可能性がある。
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