2020年4月17日金曜日

耐越水シートの開発⑬ (覆土は不要)

 河川堤防に関する技術検討会(座長・山田正中央大学教授 )が検討している方法の中に、表被覆型として、ブロック張のほかに、遮水シートや吸出し防止シートがある。

 遮水シートや吸出し防止シートで裏法面を被覆する場合には、シートの保護と植生のために、40㎝から50㎝の厚さで覆土が必要になる。覆土をするためには、堤防の裏法面の勾配を緩くしなければならない。

 また、覆土の締固め作業中にシートが損傷するリスクもある。

 さらに、点検や維持修繕を考えると、覆土は無い方が作業がし易い。

 ジオネット(タキロンシーアイシビル㈱)で被覆した場合、覆土は不要で、ジオネットに直に芝を張ったり、客土吹き付けができる。

 芝草の根はジオネットの網目よりも細いので、ジオネットを通り過ごして地中に根を張ることができる。

  
ジオネットに直に客土吹き付けをしている作業。

2020年4月6日月曜日

耐越水シートの開発⑫ (溶着が不要な構造)

  土木研究所が過去に行った吸出し防止シートや遮水シートによる越水対策の実験では、シートの継目が弱点になるために溶着が必要であるとしている。継目に流水が集中し侵食されるからである。

 溶着というのは加熱して、シートを熔かして圧着することをいう。しかし、こうした高分子系の素材を高温で加熱すると、素材が脆化して時間の経過に伴い破断する現象が発生することがある。これは「熱劣化」という現象である。

 また、工事現場における加熱溶着は平坦な場所ではなく、傾斜のついた法面での作業になり、作業がきつく効率が低下する。

 さらに、雨天での作業は不可能になる。

 品質管理の行き届いた工場内で、シートの両側縁部を下の絵のように加工しておくと、現場では二枚のシートを嵌合させるだけで作業が完了する。念のため、段ボール用の封函機のステープラー(ホッチキスの一種)で、上面からステンレス製の針で縫い込むこともできる。雨が降っていても作業に支障はなく、継目の強度が格段に向上する。

ネットの側縁部を折り曲げて加工した、ジオネットのロール 




折り曲げた側縁部を咬み合わせてステンレス製の針を使って、シテープラー(ホッチキスの一種)で縫い、越流水が入り込まないようにする。これにより継目の溶着は不要になる。

耐越水シートの開発⑪ (ジオネットで耐越水)

 ジオネットの上には、直接、野芝を張ったり客土吹き付けが可能なので、覆土は不要になる。
 
 ジオネットの網目を通過した芝や雑草の根毛は、ジオネットを地山から剥がれないようにするためのアンカー代わりにもなるし、越流水で芝や雑草が流出するのを防止する効果もある。

 そもそも芝が堤防法面に採用されたのは、芝の根が緻密なので洪水に侵食されにくいからである。しかし、天然の芝なので均一な状態で根が張らせるのは困難で、必ず、根が疎らな箇所が発生する。

 それをカバーするのがジオネットである。工場生産された緻密なジオネットが、芝の根の代わりに洪水や流水に抗ってくれる。これがジオネットの耐越水効果である。

 しかも、イタドリやヨモギ、セイタカアワダチソウなどの地下茎の成長を防止するし、モグラなどの侵入も阻止できる。

2020年4月2日木曜日

耐越水シートの開発⑩ (各シートの比較)

 耐越水対策としての、裏法面の被覆方法を考えるときに、最も重要なことはコストである。
 全国の堤防の延長は膨大であり、高コストの方法だと予算が追い付かない。
 もちろん、コンクリートブロックで覆うのが理想ではあるが、膨大な予算がかかり、工事がすべて終わるのには何十年もかかる。

 耐侵食性がコンクリートブロックのように完璧でなくても、越水破堤に至る時間を引き延ばす方法があれば、越水破堤の発生頻度は大幅に減らすことができる。
 越水に数時間持ちこたえられれば、多くの河川が救われる。

 いま、求められるのは、数年内で多くの河川堤防の耐越水性を一定レベルまで底上げすることである。そのためには、低コストの方法が必要である。

 シート被覆は、他の方法に比べて低コストである。下表は各種のシートについてまとめた評価である。

 私が提唱する高密度ポリエチレン製のネットであるジオネット(またはジオグリッド)は、最も低コストであり、継目は溶着ではなく嵌合式の構造が可能である。
 また、覆土することなく直接、芝などの植生が行えるし、覆土が無い分だけ点検や補修が比較的容易なのである。