2018年11月26日月曜日

省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティング)を施工する(1)

 秋田自動車道の大館北IC~小坂北ICは多雪地帯の山岳道路であり、トンネルと橋梁が連続する。計画段階で冬期のスリップ事故やスタックが懸念されていた。

 このため、トンネルの出入り口付近は空気熱ヒートポンプによるロードヒーティングを計画していたが、最も凍結しやすい橋面部ではロードヒーティング導入の予定は無かったことから、急遽、私が考案した、超省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティング)を導入することとなった。

 2013年(平成25年)、大川目沢橋(L=431m)や、大茂内沢橋(L=88m)など合計4橋(総延長718m)に、超省エネ型ロードヒーティングの施工を開始する。

 電熱線の布設は、従来のロードヒーティングのようにパネル状になっていないことから、橋面舗装に溝を掘って入れ込むだけで済む。


カッターでの溝掘りが完了した状況。溝の位置(わだちの位置)を間違えないように注意が必要だ。

溝に電熱線を入れ込んでいるところ。作業は極めて簡単だ。

2018年11月15日木曜日

省エネ型ロードヒーティング  ~電熱線は舗装の変形に耐えられるか~

 ロードヒーティングの故障の第一原因は、舗装の変状に伴う電熱線の破断である。

 「超省エネ型ロードヒーティング」(別名「ライン型ロードヒーティング」)の構造を検討する上で最大の課題は、電熱線が破断しにくい構造を考えることだ。

 電熱線よりも少し広めの溝を掘り、電熱線の周りに適切な可撓性のある瀝青系の舗装用シール材を注入することで、仮に舗装が変形してもシール材が緩衝材として電熱線を守れる構造が求められる。シール材は数種類のものを試験して、最終的に日瀝のクラックシールを選択した。


 写真はシール材がどのように電熱線を保護できているかの実験状況。アスファルト舗装の品質試験で使用される「ホイールトラッキング試験」で検証した。

 「ホイールトラッキング試験」は、60度の高温状態で舗装に車輪を当てて、へこみ量が1㎜になるまでの回数を確認する試験で、5250回目で1㎜に達した。

 「密粒度アスコン(改質Ⅱ型)」と呼ばれる、国道で一般的に採用されている舗装で検証したところ、電熱線への影響は見られず、実用性が見えてきた。

ホイールトラッキング試験の状況。車輪が左右に延々と往復
する。
試験後のサンプル。広い溝と狭い溝とも電熱線への影響は見られない。
 

2018年11月14日水曜日

省エネ型ロードヒーティング(スリップ事故防止対策)  ~舗装に溝を掘~

  新設の橋に、ロードヒーティングの電熱線を布設する作業手順。

  橋の舗装は通常、基層と表層の2層で構成されている。

 写真は、基層に舗装カッターで溝を掘っている状況。日沿道の大館小坂道路の橋梁だ。

 電熱線の太さは約10㎜。溝の幅はそれよりもやや広い12㎜とした。2㎜の余裕は、電熱線の伸縮に対応できるようにするためだ。


電熱線の布設イメージ。溝の中で電熱線が伸縮できるように余裕をもたせる。
 
舗装にカッターで溝を掘る作業。カッターの刃を3枚重ねている。

2018年11月8日木曜日

簡単で安く施工できるロードヒーティング(スリップ事故防止対策)の発案

 従来の発想で、供用中の橋にロードヒーティングを追加設置するのは難しい。少なくとも、橋面舗装はすべて剥がさなければならないし、温水パイプのように太いものは、橋面舗装の中に格納しきれない。

 そこで下のイラストのように、電熱線を布設する方法を考えた。
 舗装カッターで溝掘りをして電熱線を入れ、隙間を瀝青シーリング材で埋める。
 
 これだと、凍りやすい橋からスリップ事故を防止できるかもしれない。

 しかし、どんなシーリング材がいいのか、舗装が流動して電熱線が破断しないようにするためにはどうしたらいいのか、電熱線の間隔はどれくらいか、電熱線の深さはどこがいいのかなど、いろいろな課題が出てくる。

 国土交通省の東北技術事務所の技術課長をしているときだった。

橋梁に簡単で低コストにロードヒーティングを施工するイメージ図

2018年11月7日水曜日

省エネ型ロードヒーティング ~橋は凍結しやすい しかし対策はほとんど取られていない~

 橋は凍結しやすい。 
 特にトンネルと橋梁が連続しているような山岳道路では、橋付近でスリップ事故が起きやすい。
 
 雪や凍結が無いトンネルの中で加速し、そのまま凍っている橋に差しかかって、慌てて減速するからだ。
 
 橋梁は雪が積もり寒風に晒されるので路面凍結しやすい。さらに、除雪で橋の路肩に溜まった雪が、日中解けて凍ることも多い。
 
 道路管理者は橋梁部を重点散布箇所に指定して、凍結防止剤(凍結抑制剤とも呼ばれる)を散布している。しかし、凍結防止剤はマイナス5度以下や、降雪量が毎時2㎝以上になると、効果が大幅に弱まる。トンネルの出口は危険なのである。
 
 東北のごく一部のトンネルの出入り口部では、トンネル湧水やヒートポンプによる温水を循環するロードヒーティングを導入しているが、橋面の凍結防止対策は殆どされていない。

 橋面の舗装の厚さは薄く、温水管を布設しても破損する可能性が高い。そうなると床版コンクリートに埋めるしかないが、あらかじめ床版を通常よりも厚く設計しておかなければならないが、設計者の頭はなかなかそこまでは回っていないのが実情だ。

 橋が完成しスリップ事故が多発してから慌てて対策を検討することになり、「後悔先に立たず」で想像力や配慮が足りなかったことを悔やむ設計者がほとんどで、かくいう自分もまたその一人だ。

日沿道のトンネルの入り口の橋台部のヒーティング。
ヒートポンプによる温水循環で融雪しているが、コストが高いのが難点だ。手前のわだち部の雪が融けている部分が、私が開発した超省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティングとも呼ばれる)

2018年11月2日金曜日

超省エネ型ロードヒーティングのイメージ

 道路幅全部の雪や氷を融かさなくても、タイヤの幅だけ融かすだけで、スリップの発生は大きく減少する。このことは雪道を走った経験のあるドライバーなら、だれでも知っている。雪道を走るときは、わだちからはみ出ないようにするのが、雪国のドライブの鉄則だ。

 道路一面に圧雪になっている路面に対し、わだちの幅だけでも舗装が出ている路面は運転の安全度は格段に向上する。

 ロードヒーティングの電熱線を下のイメージのように、タイヤの直下に配置する。大型トラックや普通自動車、軽自動車のタイヤ間隔はそれぞれ異なるが、どの車両にも当てはまる間隔を選択する。

 従来のロードヒーティングは、道路の幅いっぱいに横断方向へ「ヘアピン状」に電熱線を配線するが、私が提案する方法だと、わだち部分だけの配線で済む。これでコストが大幅に下がる。また、この方法だと電熱線の真上を連続してタイヤが走行するので、熱のロスは少ない。

 わだちの間に融かせない雪が積もって、車が走れなくなるのではとの疑問をもたれそうであるが、国道の除雪出動基準は路面積雪が5㎝以上なので基準どおりに除雪していれば、わだち間に5㎝以上の積雪は発生しないことになる。それに走行車両が積雪を吹き払ってしまう。ただし、まったく除雪をしない道路では、わだち間の雪が残るのでこの方法は使えない。)

 冬期道路でスタックの発生は、路面凍結によるスリップが主原因である。
 つまり、雪を融かすよりも、凍結路面を防止することがスタック防止に不可欠と言える。
 
 
    従来のロードヒーティングの配線。道路の横断方向に緻密に配線されている
私が発案した超省エネ型ロードヒーティングのイメージ