2023年4月17日月曜日

越水対策の行方  また洪水の季節がやってくる

 国交省は一昨年、越水対策の先駆けとなるパイロット工事を、全国で16か所実施した。(下の表参照)  ほとんどが堤防法面をコンクリートブロックで覆う工法の、いわゆるブロックの三面張りだが、佐賀県の嘉瀬川だけはジオテキスタイルに植生を組み合わせたシート工法を採用している。具体には日本植生のグリットシーバーという製品だ。
 グリッドシーバーは、目合いが8mmで3.0m×0.9mのジオネットにポリエステル製の不織布を接着させたものを圃場に敷き、それに芝の種や肥料を散布し芝を生育させた後に剥がして生産される。堤防ではこれを敷いてアンカーピンで固定する。不織布に芝の根がからんでいるので、流速5m/秒にも耐えられるという。価格は、日本植生のカタログではコンクリートブロックの半分以下で済みそうだ。ブロックの三面張りが200万円/mだとしたら、グリットシーバーだと半分の約100万円/m程度になる。

 グリッドシーバーの長所は、コンクリートブロックのように覆土しなくても、多自然川づくりの基本である自然環境を維持できる。これがコンクリートブロックで覆う場合は、覆土が必然的に必要になるので、その分のコストがかかってくる。覆土するとブロックの点検が難しくなる。検討会が求める越水対策技術には点検が容易に行えることも条件になっているので、この点でもグリッドシーバーは有利だ。

 嘉瀬川を管理する国交省の武雄河川事務所では、グリットシーバーを施工後に現場で通水試験を行い、耐侵食性の確認を行っている。国交省が示す越流水深は30㎝だが、現地でその水量を確保するのが難しかったらしく、越流水深は8㎝となったが、十分な耐侵食性を確認している。
 越水対策技術は現在、業界や大学等を対象として一般財団法人国土技術研究センターが技術募集していて、早ければ年度内には評価リストがまとまる予定だが、季節は巡り、また出水期に入ってしまった。
 
 低コストで広く、そして速やかに施工できる対策が待ち遠しいと思うのは私だけではない。流域住民も同じく思っているはずだ。
 

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