関東地方整備局の渡良瀬川河川事務所が管理する桐生川の堤防には、イノシシが多く出没して堤防法面を掘り返す被害が多発していた。
イノシシは野芝などの根が好物らしく、堤防法面が穴ぼこだらけになって河川管理上の大きな問題になっていた。
事務所では平成27年ごろに対策委員会を設置して、平成28年8月ごろから平成31年2月ごろまでに、高密度ポリエチレン製の網(ジオグリット)を堤防の法面に敷き、その上に野芝を張ってイノシシが掘り返さない対策を講じた。その対策面積はおよそ20万m2にも及ぶ。
これは河川堤防では先進的で具体的な「予防保全」といえる。しかも大規模に実施されているから凄い。この事業を迅速に採択した渡良瀬川河川事務所の英断に拍手を贈りたい。
イノシシはジオグリットの上に張られた野芝は剥がすが、好物の野芝の根はジオグリットの下にあるので途中で諦めてしまうらしい。イノシシの去った後には剥がされた野芝が散乱しているので、維持業者が直ぐに補修することになる。ジオグリットが敷かれているから深くは掘り返えすことができないので、未対策の時と比べると補修作業はかなり軽減されたとのことである。
イノシシによる堤防の損傷は桐生川だけでなく、全国の各地で発生しているようだが、渡良瀬川河川事務所のこの予防保全対策には及ばない。他の整備局ではこれほど思い切ったことはできない。いまだにイノシシがいたずらした穴を日がな一日かけて埋めて回っている。科学が進化した現代において情けないことだと作業員たちも感じているだろう。
おそらくは、国内の河川管理者の皆さんは渡良瀬川河川事務所のこうした取り組みを知る由もないだろう。予防保全が功を奏した渡良瀬川の対策は、全国に展開されてしかるべきものだと思う。
イタドリやブタクサ、セイヨウカラシナ、セイタカアワダチソウ、モグラ、キツネなどに対する予防保全は、地味かもしれないが河川行政の基本的な課題だ。渡良瀬川河川事務所のように迅速な英断が求められる。
桐生川出張所のホームページに示されたイノシシ対策。
ジオグリットの網目が粗いのでイタドリの防草効果はなく、イノシシやモグラの防止が専門の対策となっている。仮に目合いを1mmにするとイタドリやセイタカアワダチソウなども防止でき、一石五鳥が実現すると思うのだが…。
0 件のコメント:
コメントを投稿