2018年6月29日金曜日

阿武隈川でのイノシシ対策(1)

    ジオネットでイノシシ対策ができないかと、平成29年1月、国土交通省の角田出張所から、私の職場だった秋田河川国道事務所に問い合わせメールがあった。

   そこで、渡良瀬川河川事務所がやっている10㎜の目合いのジオグリットと、私が推奨するジオネットの1㎜メッシュの2種類を試験施工することになった。

 阿武隈川が流れる宮城県丸森町は、近年イノシシ被害が多発している。

  試験施工の対象地は、南斜面の堤防。イノシシの掘り起こしは冬場に多い。餌が枯渇する冬に、日当たりのいい堤防法面を20~30㎝程度掘り起こし、草の根を食べ荒らすという。
 
   写真は施工6ヶ月後の平成29年8月のもの。
 中央部の草丈が低い箇所がネットを敷いた箇所で、草丈は周りよりも大幅に低くなっている。10㎜と1㎜の違いはまだ明確には現れていない。



宮城県丸森町の阿武隈川の堤防。上のポールより下側がネットを敷いた部分。草丈の違いがはっきりと分かる。このままだと除草が不要になり、メンテナンスフリーが実現する。

2018年6月28日木曜日

イノシシ対策と雑草抑制を兼ねる

    国土交通省の渡良瀬川河川事務所管内の堤防では、イノシシによる掘り起こしが多発し対策工事が進められている。

   平成28年度の補正予算で桐生川3.4㎞、渡良瀬川2.0㎞にわたって、樹脂製のネットが布設された。 (詳しく桐生出張所のホームページ「きりゅう 河川通信」を参照)
  http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000696722.pdf 
 この事務所では、その後も継続してジオグリットによる補強対策が行われている。
 
   対策手法は、私が取り組んでいるジオネット(ネトロンシート)によるイタドリなどの雑草抑制対策と同様だが、渡良瀬川で使われているネットは、ジオグリットと呼ばれる補強土壁用の高強度のネットで、目合いは8~10㎜ぐらいである。

  このくらい目合いが広くなると雑草の抑制効果はほとんど無い。あくまでもイノシシ対策だけが目的になっているからだ。

    しかし、どうせならばイノシシ対策と雑草抑制を兼ねた方がベターだ。
  ジオネット(ネトロンシート1㎜メッシュ)は、それが実現できると考えている。

2018年6月25日月曜日

堤防のセイヨウアブラナの対策

    南東北以南の堤防では、春になると菜の花が咲き風物詩となって市民から歓迎されているが、河川管理上では大きな課題になっている。

   セイヨウアブラナ(セイヨウカラシナ)は越冬のための養分を蓄えようと、地中表面にカブ状の根を形成させる。この根が堤防表面の腐葉土化を招き、堤防を弱体化させる。腐葉土化が進むと大量のミミズが発生し、それを餌とするモグラやネズミが住み着き堤防に多くの穴を掘る。

   また、モグラやネズミを餌とするキツネもやってくる。
 
   ブワブワに腐葉土化した堤防表面や、モグラやキツネが堤防を穴だらけにすると、洪水のときに大きな弱点となることが考えられる。河川を管理する国土交通省の職員は、毎年洪水の発生時期前にブワブワや穴がないか点検をしなければならない。
 
  ネトロンシートと呼ばれるジオネット(高密度ポリエチレン製の網)はセイヨウアブラナの生育を阻止してカブ状の根の形成を防止できる。さらに、ネトロンシート(㈱タキロンシーアイシビル)はモグラやキツネの爪よりも硬く強度があるので、これらの動物による穴掘りにも対抗でき、国交省の岩手河川国道事務所や仙台河川国道事務所が管理する河川堤防で試験施工されている。
堤防に掘られたキツネの巣。洪水になると弱点になる。


2018年6月13日水曜日

網の防草効果

 実験を開始してから約一年。網の雑草抑制効果が現れた。
 
 下の写真は2016年9月3日の撮影のもので、
 
 ①は2015年の8月に野芝の下に1.2㎜×1.0㎜の網戸用の網を敷設した箇所。
 ②は2015年の8月に野芝だけを張り替えた箇所。
 ③は2015年の10月に野芝の下に1.2㎜×1.2㎜のネトロンシート(タキロンシーアイシビル㈱)を敷設した箇所。
 ④は以前からの状態の箇所。
 
 ①~④とも2015年10月から2016年9月までの1年間、除草はしていないが、ネットを敷設した①と③の区画は、イタドリの繁茂防止だけでなく野芝の草丈も適度に抑制できている。

 この状態だと除草をしなくても、堤防の点検・巡視ができる。

 つまり、堤防植生のメンテナンスフリーが実現できそうなのである。

堤防での実験状況。網を布設するとイタドリの成長抑制の効果が現れた。

2018年6月11日月曜日

網の上に野芝を張る

  ネトロンシートの目合いは1.5㎜。

  野芝を張るときは、目串と呼ばれる割り箸のように太い竹串で野芝を串刺しにする。しかし、この方法だと、野芝1枚あたり2~3本は串を使うので、せっかく1.5㎜の細かい目合いのネトロンシートに大きな穴が開くことになる。その大きな穴の目をイタドリなどの地下茎植物の芽が探しあてて、発芽する可能性がある。(1.5mmメッシュではイタドリの抑止効果はいまいち。推奨は1.0mmメッシュ)
  目串は最小限の太さが望ましいと考え、市販の爪楊枝を使うことにした。爪楊枝の太さは直径2.0㎜。爪楊枝の頭部のくぼみを利用して、ネトロンシート(㈱タキロンシーアイシビル)を1㎝四方にカットして野芝を押さえるためのワッシャー代わりにする。
芝を押さえるために爪楊枝を目串代わりにした。1㎝四方に切ったネットをワッシャー代わりにする。
ネットの上に野芝を張っている状況。作業員の重みでネットがたるみだしたので、時々整形が必要だ。

2018年6月8日金曜日

雄物川の堤防で実験

 高密度ポリエチレン製で、目合いの細かい網がないかと探していると、タキロンシーアイシビル(株)で、ネトロンシートという2㎜の目合いの網が見つかった。

 これ以上細かいものは製造していないとのことだったが、実験の趣旨を説明すると会社は1.5㎜のものを製作してくれた。
 
 平成27年8月11日、秋田市内の雄物川の堤防で目合いが2.0㎜と、1.5㎜のネトロンシートと、ペットが爪をかけても破れない網戸(目合いは1.2㎜程度)の3種類の網を用意して、実験を始める。
 
 イタドリが繁茂している箇所を探し、最初にイタドリを除草して表土を5㎝程削る。新しい土を張り付けて法面整形してからネットを貼る。

 ネットの効果が比較できるように、ネットを使用しない区画も設けた。
各種のネットを貼り終えた光景。奥にはイタドリが繁茂している。

2018年6月5日火曜日

網で雑草をコントロール

  堤防の法面は野芝で被覆する。
 
  野芝の根(根毛)の太さは0.3㎜程度なので、1㎜の目合いの網(㈱タキロンシーアイシビル)ならば問題なく根をはることができるので、成長を阻害することはない。しかし、太いイタドリの芽は網を通過することはできない。
 
  ここでいう網とは網戸のように網目が自由に広がるものではなく、線材が溶着されていて網目が広がらないものである。
 
   植物は多年草と一年草に分けられる。多年草は地下茎から発芽し、一年草は毎年種から発芽する。河川管理者を悩ます丈の高いイタドリやセイタカアワダチソウは多年草である。この網は少なくとも多年草の成長を抑制する効果が期待できそうだ。

 下図がそのイメージである。

網で雑草の生長を抑制しているイメージ。