①既存の堤防の性能を毀損しないこと
②越水に対する性能を有すること
ひとつ目の「既存の堤防の性能を毀損しない」ことについて、事務局は既存の堤防の性能の定義を次のように考えているようだ。
・不同沈下に対する修復の容易性
・堤体と基礎地盤との一体性
・嵩上げ及び拡幅等の機能増強の容易性
・損傷した場合の復旧の容易性
・基礎地盤及び堤体の構造及び性状にかかる調査精度に起因する不確実性への適応性
・基礎地盤及び堤体の不均質性に起因する不確実性への適応性
・環境及び景観との調和性
・構造物の耐久性
・維持管理の容易性
・施工性
・事業実施による地域への影響の調和性
・経済性
・公衆の利用性
上記のうち、例えば「経済性」を毀損するというのは、盛土と芝による従来の堤防の費用に比べて、それを大きく上回ってはダメということのようである。それがどれくらいなのかは現時点では不明で、次回の検討会に示されるかも知れない。
そのほかの維持管理の容易性とか施工性なども、具体の数値等がないと提案していいものかと迷いそうだ。技術提案者側とすれば、それぞれの指標を明記してもらわないと提案が難しくなる。
ふたつ目の越水に対する性能は、次のように説明している。
近年の越水事例における越流水深や越流時間、近年の越水事例の堤防の被災状況、避難にかかる時間の研究、過去の越水に対する堤防強化の検討における越流水深・越流時間の研究などを踏まえ、技術開発目標(評価の目安)は、『越流水深30cmの外力に対して、越流時間3時間』は越水に対する性能を維持することとしている。
越流による川裏の法面や法尻の侵食速度は、堤防の高さや勾配、堤体の湿潤状況、土質、締固め密度、浸透水の有無、川表での遮水シートの有無により変化する。このような評価条件を具体的に示さないと、越流時間3時間の耐用試験が困難になるので、事務局から今後具体の指標が示されることを期待している。各提案者が同様な性能条件に基づいて技術提案をすることが求められる。
なお、仮に堤防高さ2mと示された場合、実物大の堤防で水理実験できる設備を有する施設は、国内に数か所しかない。縮尺模型での実験が認められたとしても、民間が持っている実験施設は稀だ。
また、実験に要する費用も高額で、大型のものだと1000万円以上はかかるようである。
このことから、性能指標は堤防丸ごとではなく、被覆型の場合であれば、ブロックやシートのみの耐侵食性能に置き換える方法があるかも知れない。例えば、流速4m/秒で3時間の越水流に対して、侵食深さが5cm以内というのもありうる。しかし、この程度の水理実験でも数百万円の実験費用がかかるとメーカーの担当者から聞いたことがある。一般メーカーにとってなじみの少ない水理実験は、技術開発の大きな関門になりそうだ。
関門を克服するために、メーカーの希望に応じて土木研究所などと共同か、施設の無料開放で実験ができればと考える。
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東京理科大学の越水破堤の実験状況。室内実験場としては国内トップクラスだが、これでも堤防高1mが限度である。 |
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