国土交通省には河川を専門とする技術者が数千人もいる。まさに、日本一の河川技術集団といえる。
この集団は多くの河川災害を体験し、河川と対峙してきた。被害調査や復旧計画、復旧工事など現場に常駐し、それなりに相当な知見を培っている。彼らは河川に対する技術者としての矜持を持っているはずなのである。
また、都道府県などの自治体にも同様に数多くの河川技術者がいる。さらに、設計コンサルタントで河川を専門にしている人も多くいるし、建設会社で河川工事をし、河川構造の知見を積み重ねてきた人も多い。定年退職で現職を引退していても、河川技術に詳しいOBも多くいる。
国交省の治水課は今後、民間企業や大学等から粘り強い堤防の技術を募集するが、募集の対象者には国や自治体の河川技術者や、設計・建設技術者、技術集団のOB達は含まれていない。
越流水深30cmの外力に対して、越流時間3時間の越水に対する性能を維持できることを証明することが、検討会の示す提案条件のひとつである。残念ながら各地方整備局には大型の水理実験施設がなく、性能条件を証明できないので国の河川技術者は応募できない。もちろん、自治体の河川技術者もOB達もである。つまり、性能条件の証明が応募の重い足枷となっていて、河川と間近に対峙し河川をいちばん知っている者からの技術提案ができないということである。
性能条件をデーターで証明できなくても、豊富な河川の知見を持つ技術集団からの技術提案は、それなりに核心をついているはずで、粘り強い堤防の技術開発のヒントになる可能性は大きい。
例えば、性能条件の証明は導入支援機関が行うことができないだろうか。応募された技術の実用の可能性の判断は、広い知見を持っている導入支援機関ならば容易に選択できよう。現場で河川と対峙した技術集団の知見は、必ずや課題の解決に寄与するはずだ。
粘り強い堤防技術の確立は、民間企業や大学を頼るのではなく、これに加えて、現場で河川に関わった技術者たちも含めたオールジャパンで進めてほしい。
国土交通省には河川を専門とする技術者が数千人おり、日本一の河川の技術者集団だ。河川に対し矜持をもって仕事をしている技術者たちからの提案は重要だ。
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