令和3年3月14日に開催された土木学会の基礎水理シンポジウムで、国内の越水対策のリーダーのひとりでもある、国土交通省の国総研河川研究室長の福島雅紀氏は、現在検討中の粘り強い河川堤防の構造は下図のように、①表面被覆型、②断面拡大型、③一部自立型の3種類だとしている。
国総研は令和2年10月に、大学や企業を対象として「越水に対する河川堤防の強化構造の検討に資する評価技術の開発」というテーマで、技術開発を公募した。予算は2年間で2000万円を上限とするものであるが、7件の応募があり東京工業大学、京都大学、(株)富士ピー・エスの3者の研究テーマが採択された。
裏法面をブロックやシートで覆う「表面被覆型」では、京都大学の肥後陽介教授が越流侵食の粘り強さの評価手法と、実装フレームワークの開発を2年かけて行うこととなった。この成果を基にしてブロックやシートなどの効果実証が進められる予定だ。
「表面被覆型」は、ブロック、シート、かご、改良土、張芝等の資材で堤防裏法面の侵食を遅らせて、粘り強い堤防を実現しようとするものだが、前述(耐越水シートの開発⑲)の国交省の検討会資料では、ブロック、シートのみが表示されており、真意は不明だ。
全国の直轄や自治体管理の膨大な延長の河川を対象に、粘り強い堤防を短期間で整備することが喫緊の課題となっているが、そのためには構造をシンプルにして施工性を向上させ、かつコストを抑え、さらに景観との調和や維持管理のしやすい工法を選択することが求められる。もちろん、一定の耐侵食性能を兼ね備えて粘り強さを発揮できることは越水対策の基本でもある。
国交省に40年間在職し、堤防や道路の厄介モノであるイタドリやセイタカアワダチソウを、ジオネットと呼ばれる樹脂製の網で、恒久的に成長を抑制するコスト削減手法を開発して特許取得したこと。また、従来の5分の1程度のコストや電力量で融雪効果が発揮できる、超省エネ型ロードヒーティング(別名ライン型ロードヒーティング)の開発。そして、技術士として挑んできた歩道や擁壁、道路の防草、法面の湧水対策などの課題などについて伝承し、少しでも社会に貢献できればと願っています。 (連絡先 atk.shimazu@gmail.com)
2021年9月2日木曜日
2021年8月25日水曜日
耐越水シートの開発⑲ (国交省の検討方針 ~その1~)
国土交通省は令和2年6月12日に、「令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会」(座長・山田正中央大理工学部教授)の第3回の会合を行い今後の越水対策の方針案を議論した。その中で「緊急的・短期的な河川堤防の強化方策の方向性」として、下記のような方針が示された。
検討会は今後の越水対策について、「越水した場合であっても堤防が決壊するまでの時間を少しでも引き延ばす」という、現行の危機管理型ハード対策の概念を発展的に踏襲し、さらなる引き延ばし効果を有する「粘り強い河川堤防」を目指すべきだと結論づけた。
下の表は、国交省が検討会の意見をイメージ化したもので、最下段の部分が検討会の目指す「粘り強い河川堤防」になる。
表中の赤枠の「粘り強い河川堤防」には、危機管理型ハード対策としての天端舗装と裏法尻補強の間に、新たに被覆工が施されている。この表の被覆工はブロックやシートだと明記されており、これらにより粘り強さが向上し、危機管理型ハード対策(天端舗装+法尻ブロック)よりも、決壊するまでの時間を延ばすことを目指す。決壊するまでの時間を引き延ばすことができれば、その分だけ避難活動の時間が増え、被害の拡大を防止できるからだ。
つまりは、越水対策の大原則は、洪水時の河川水位を下げることではあるが、この大原則の解消が当面困難な箇所においては、ブロックやシートなどで堤防をより粘り強くして、決壊までの時間を延ばすことを目指すという。
危機管理型ハード対策は平成28年度から5ヶ年計画で、全国の直轄が管理する河川を対象に天端舗装が1310㎞、法尻ブロック補強が630㎞計画され、全国各地で急ピッチで整備が進められた。膨大な予算を投じて先行的に整備されたこれらの施設は、当然ながら今後の越水対策にも活用されることが重要であるから、緊急的・短期的な取り組み手法は、危機管理型ハード対策として整備された、法尻ブロックを大幅に改変しない構造で検討することか望まれるのである。
国土交通省の検討会の資料。表は危機管理型ハード対策と粘り強い河川堤防の違いを示している。この表の右下には小文字で「ブロック・シートによる法面保護工により粘り強さが向上し、決壊に至るまでの時間を長くするなどの減災効果を発揮」と今後の方向性が示されている。
検討会は今後の越水対策について、「越水した場合であっても堤防が決壊するまでの時間を少しでも引き延ばす」という、現行の危機管理型ハード対策の概念を発展的に踏襲し、さらなる引き延ばし効果を有する「粘り強い河川堤防」を目指すべきだと結論づけた。
下の表は、国交省が検討会の意見をイメージ化したもので、最下段の部分が検討会の目指す「粘り強い河川堤防」になる。
表中の赤枠の「粘り強い河川堤防」には、危機管理型ハード対策としての天端舗装と裏法尻補強の間に、新たに被覆工が施されている。この表の被覆工はブロックやシートだと明記されており、これらにより粘り強さが向上し、危機管理型ハード対策(天端舗装+法尻ブロック)よりも、決壊するまでの時間を延ばすことを目指す。決壊するまでの時間を引き延ばすことができれば、その分だけ避難活動の時間が増え、被害の拡大を防止できるからだ。
つまりは、越水対策の大原則は、洪水時の河川水位を下げることではあるが、この大原則の解消が当面困難な箇所においては、ブロックやシートなどで堤防をより粘り強くして、決壊までの時間を延ばすことを目指すという。
危機管理型ハード対策は平成28年度から5ヶ年計画で、全国の直轄が管理する河川を対象に天端舗装が1310㎞、法尻ブロック補強が630㎞計画され、全国各地で急ピッチで整備が進められた。膨大な予算を投じて先行的に整備されたこれらの施設は、当然ながら今後の越水対策にも活用されることが重要であるから、緊急的・短期的な取り組み手法は、危機管理型ハード対策として整備された、法尻ブロックを大幅に改変しない構造で検討することか望まれるのである。
国土交通省の検討会の資料。表は危機管理型ハード対策と粘り強い河川堤防の違いを示している。この表の右下には小文字で「ブロック・シートによる法面保護工により粘り強さが向上し、決壊に至るまでの時間を長くするなどの減災効果を発揮」と今後の方向性が示されている。
2021年8月11日水曜日
耐越水シートの開発⑱ (体験実習施設として導入)
国土交通省の東北地方整備局河川部は、河川管理担当者等を対象に点検技術の向上に役立ててもらおうと、令和元年に東北技術事務所の構内へ、堤防や樋門などの体験型実習施設を整備した。
それぞれの施設には、ひび割れや法崩れなどの変状や異常があらかじめいくつかセットされていて、河川管理者だけでなく、設計コンサルタントや建設会社の社員なども体験学習できるようになっており、写真撮影した時にも自治体の職員が研修していた。
下の写真は、堤防の構造が理解しやすいように堤防断面を現わしたものだが、芝の下に敷かれている黒いシートが、耐越水シートと同じ1mmメッシュの高密度ポリエチレン製の網のジオネットである。 (メーカーのタキロンシーアイシビルでは「ネトロンシート」と呼んでいる、NETIS KT-180089-A )
ただし、東北技術事務所がジオネットを導入したのは、イタドリやセイタカアワダチソウなどの強害雑草の成長を抑制して、堤防除草の回数を減らすのが目的。これにより堤防の点検がしやすくなる効果もある。つまり、ジオネットは雑草の成長抑制と耐越水性の両方の効果が期待できるのである。
芝はトヨタが開発したTM-9と呼ばれる改良芝が張られている。単価は通常の倍ほどするが草丈は通常の半分以下という。ネトロンシートと張芝の施工単価は経費込みで3500円程度ですむ。
越水対策には以下の課題の克服が求められ、今後、国土交通省の治水課、国総研や土木研究所、国土技術研究センターなどが関係業界団体やメーカー、学会、大学などと情報交換をして知恵を絞りながら、表面被覆型(ブロックやシートなど)や断面拡大型、一部自立型の3種類について研究がすすめられることとなっている。
①、粘り強さの向上
②、維持管理の容易性
③、施工性
④、提体との一体性やなじみ
⑤、不同沈下に対する修復の容易性
⑥、損傷時の修復の容易性
⑦、環境・景観との調和
⑧、低コスト
⑨、危機管理型ハード対策を活かすこと、
東北技術事務所の堤防の体験実習施設。法面の一部では点検技術の向上のため、ジオネットを外してイタドリがわざと植えてある。施工後2年経過したが、今のところ除草はしていないものの、セイタカアワダチソウやヨモギなどの雑草をコントロールできており、除草不要のメンテナンスフリーが続いている。
それぞれの施設には、ひび割れや法崩れなどの変状や異常があらかじめいくつかセットされていて、河川管理者だけでなく、設計コンサルタントや建設会社の社員なども体験学習できるようになっており、写真撮影した時にも自治体の職員が研修していた。
下の写真は、堤防の構造が理解しやすいように堤防断面を現わしたものだが、芝の下に敷かれている黒いシートが、耐越水シートと同じ1mmメッシュの高密度ポリエチレン製の網のジオネットである。 (メーカーのタキロンシーアイシビルでは「ネトロンシート」と呼んでいる、NETIS KT-180089-A )
ただし、東北技術事務所がジオネットを導入したのは、イタドリやセイタカアワダチソウなどの強害雑草の成長を抑制して、堤防除草の回数を減らすのが目的。これにより堤防の点検がしやすくなる効果もある。つまり、ジオネットは雑草の成長抑制と耐越水性の両方の効果が期待できるのである。
芝はトヨタが開発したTM-9と呼ばれる改良芝が張られている。単価は通常の倍ほどするが草丈は通常の半分以下という。ネトロンシートと張芝の施工単価は経費込みで3500円程度ですむ。
越水対策には以下の課題の克服が求められ、今後、国土交通省の治水課、国総研や土木研究所、国土技術研究センターなどが関係業界団体やメーカー、学会、大学などと情報交換をして知恵を絞りながら、表面被覆型(ブロックやシートなど)や断面拡大型、一部自立型の3種類について研究がすすめられることとなっている。
①、粘り強さの向上
②、維持管理の容易性
③、施工性
④、提体との一体性やなじみ
⑤、不同沈下に対する修復の容易性
⑥、損傷時の修復の容易性
⑦、環境・景観との調和
⑧、低コスト
⑨、危機管理型ハード対策を活かすこと、
東北技術事務所の堤防の体験実習施設。法面の一部では点検技術の向上のため、ジオネットを外してイタドリがわざと植えてある。施工後2年経過したが、今のところ除草はしていないものの、セイタカアワダチソウやヨモギなどの雑草をコントロールできており、除草不要のメンテナンスフリーが続いている。
2021年5月25日火曜日
耐越水シートの開発⑰ (無数のアンカーが頑張る)
耐越水シートに必要な条件は、シートが堤防法面に密着して剥がれにくいことだ。
1mmメッシュのジオネットには1m2当たりに100万個の穴(網目)がある。その穴を芝の根毛や根が突き抜けて堤防法面に延びていく。
つまりは、根毛が無数のアンカーピンとなって頑張るので、ジオネットと堤防法面が一体化するということである。
このような状態で越水が発生しても、芝の葉とジオネットで流速が低下し、芝の根毛が無数のアンカーとなって、水圧や流速に粘り強く対抗して侵食やシートの剥落を防ぐのである。芝の根毛の太さは0.2~0.4mmほど。網目の大きさは1mmなので根毛が通過すると、網目はほぼ塞がり侵食防止効果が向上することになる。
【写真】ジオネットの網目から這い出た芝の根毛。この根毛がアンカーピンの代わりに頑張って法面と一体化する。
1mmメッシュのジオネットには1m2当たりに100万個の穴(網目)がある。その穴を芝の根毛や根が突き抜けて堤防法面に延びていく。
つまりは、根毛が無数のアンカーピンとなって頑張るので、ジオネットと堤防法面が一体化するということである。
このような状態で越水が発生しても、芝の葉とジオネットで流速が低下し、芝の根毛が無数のアンカーとなって、水圧や流速に粘り強く対抗して侵食やシートの剥落を防ぐのである。芝の根毛の太さは0.2~0.4mmほど。網目の大きさは1mmなので根毛が通過すると、網目はほぼ塞がり侵食防止効果が向上することになる。
【写真】ジオネットの網目から這い出た芝の根毛。この根毛がアンカーピンの代わりに頑張って法面と一体化する。
2021年5月7日金曜日
耐越水シートの開発⑯ (コンクリートだらけの堤防)
東日本大震災で被災した岩手県や宮城県、福島県の河口に近い河川の堤防は、下の写真のように川表と天端、
川裏がコンクリートで固められている。津波の破壊力に耐えるためには、固いコンクリートで覆うのが最も安心
である。
しかし、そうは言えども、コンクリートの堤防の上に立ってみると、妙に落ち着かない。
「兎追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川」と謳い慣れた日本の景色はここにはないのだ。山高く水清しと表現さ れるような、日本の原風景は感じられないのである。
コンクリートで三方を固めることは否定しないものの、コンクリートをむき出しにするのは抵抗感がある。
せめてコンクリートの上に覆土するとか、多自然型護岸ブロックの活用ができないものかと思う。
越水による堤防の裏法面の侵食防止方法としても、コンクリートブロック張は最も有効であろう。
しかし、コンクリートブロック張と覆土工を合わせた工事費用は多額であり、とても国内の多くの河川の 強靭化を進めることは難しい。
耐越水性を確保しつつ、維持管理しやすく、多自然型川づくりを低コストで実現できる工法が求められて いる。 堤防のすべての面がコンクリートで覆われた堤防。日本の美しい川づくりを標榜する国交省だが、越水対策としてどのような粘り強い堤防づくりを目指すのか問われている。
しかし、そうは言えども、コンクリートの堤防の上に立ってみると、妙に落ち着かない。
「兎追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川」と謳い慣れた日本の景色はここにはないのだ。山高く水清しと表現さ れるような、日本の原風景は感じられないのである。
コンクリートで三方を固めることは否定しないものの、コンクリートをむき出しにするのは抵抗感がある。
せめてコンクリートの上に覆土するとか、多自然型護岸ブロックの活用ができないものかと思う。
越水による堤防の裏法面の侵食防止方法としても、コンクリートブロック張は最も有効であろう。
しかし、コンクリートブロック張と覆土工を合わせた工事費用は多額であり、とても国内の多くの河川の 強靭化を進めることは難しい。
耐越水性を確保しつつ、維持管理しやすく、多自然型川づくりを低コストで実現できる工法が求められて いる。 堤防のすべての面がコンクリートで覆われた堤防。日本の美しい川づくりを標榜する国交省だが、越水対策としてどのような粘り強い堤防づくりを目指すのか問われている。
2020年8月20日木曜日
耐越水シート開発⑮ (地下茎植物がシートの継目を広げる)
吸出し防止シートなどにより川裏法面を被覆して、越水対策にしようとする場合注意しなければならないことがある。
遮水シートや吸出し防止シート、侵食防止シート(国総研と民間10社が開発)、ジオネットやジオグリットなどで被覆する場合、シートの継目を完全に溶着しないと、上の写真のように、継目からイタドリなどの地下茎植物が生えだす。いったん隙間ができてしまうと、他の地下茎植物も生えだして、継目はどんどん広がる。
越水流がシートの継目から入り込み、法面が侵食されるのは、土木研究所が行った実験の
の写真で立証されている(下の写真)。
したがって、耐越水対策としてシートで被覆するときには、地下茎植物が継目から芽を出さないように、溶着したり、強力な接着剤を塗ったり、噛み合わせタイプのものを使用するなどの対策が必要だが、重要なことは確実性のある施工とコストである。
遮水シートや吸出し防止シート、侵食防止シート(国総研と民間10社が開発)、ジオネットやジオグリットなどで被覆する場合、シートの継目を完全に溶着しないと、上の写真のように、継目からイタドリなどの地下茎植物が生えだす。いったん隙間ができてしまうと、他の地下茎植物も生えだして、継目はどんどん広がる。
越水流がシートの継目から入り込み、法面が侵食されるのは、土木研究所が行った実験の
の写真で立証されている(下の写真)。
したがって、耐越水対策としてシートで被覆するときには、地下茎植物が継目から芽を出さないように、溶着したり、強力な接着剤を塗ったり、噛み合わせタイプのものを使用するなどの対策が必要だが、重要なことは確実性のある施工とコストである。
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2020年5月20日水曜日
耐越水シートの開発⑭ (透気・防水性シートとの比較)
耐越水対策の選択肢として、「透気・防水性シート」がある。
遮水シートを裏法面に敷設した場合、提体内の湿潤面の上昇に伴い間隙空気の排出が阻害され、エアブローが発生して堤防が弱体化する可能性があるという。
また、降雨水が提体に浸透すると、越水で侵食されやすくなるという。
透気・防水性シートは、これらの問題を解消するための方法として、下のイラストのように防水効果や透気効果、侵食防止効果が期待されるものである。
しかし一方で、次のような課題があることも忘れてはならない。
① 透気・防水性シートは、川表と川裏の双方に敷設しないと効果が発揮できない。
② 危機管理型ハード対策として施工された法尻ブロックの下に敷かれた吸出し防止シートを貼り替える必要がある。
③ 川底の地層から提体内に浸透する河川水は排水できないので、提体の弱体化を招く可能性がある。
④ 相当の水密性が求められるので、継ぎ目の加熱溶着は完璧な施工が求められる。
⑤ シート上には覆土が必要で、覆土の施工中にシートに損傷を与える可能性がある。
⑥ 覆土することにより、シートの点検が難しくなる。
⑦ 透気・防水性シート上を雨水が流れて、シートが滑り面になり「法すべり」が発生しやすくなって覆土が滑り落ちる可能性がある。
⑧ 透気・防水性シート上に覆土した場合に、排気ができなくなる可能性がある。
昨年の台風第19号で決壊した、140箇所の国と県が管理する堤防のうち、浸透が決壊原因と考えられるのは2箇所のみのレアケースとなっているし、エアブローが提体の強度に与える影響が、科学的に十分に解明されていない状況のなか、透気・防水対策にどこまで対応するかが、今後、河川管理者の判断に委ねられる。
遮水シートを裏法面に敷設した場合、提体内の湿潤面の上昇に伴い間隙空気の排出が阻害され、エアブローが発生して堤防が弱体化する可能性があるという。
また、降雨水が提体に浸透すると、越水で侵食されやすくなるという。
透気・防水性シートは、これらの問題を解消するための方法として、下のイラストのように防水効果や透気効果、侵食防止効果が期待されるものである。
しかし一方で、次のような課題があることも忘れてはならない。
① 透気・防水性シートは、川表と川裏の双方に敷設しないと効果が発揮できない。
② 危機管理型ハード対策として施工された法尻ブロックの下に敷かれた吸出し防止シートを貼り替える必要がある。
③ 川底の地層から提体内に浸透する河川水は排水できないので、提体の弱体化を招く可能性がある。
④ 相当の水密性が求められるので、継ぎ目の加熱溶着は完璧な施工が求められる。
⑤ シート上には覆土が必要で、覆土の施工中にシートに損傷を与える可能性がある。
⑥ 覆土することにより、シートの点検が難しくなる。
⑦ 透気・防水性シート上を雨水が流れて、シートが滑り面になり「法すべり」が発生しやすくなって覆土が滑り落ちる可能性がある。
⑧ 透気・防水性シート上に覆土した場合に、排気ができなくなる可能性がある。
昨年の台風第19号で決壊した、140箇所の国と県が管理する堤防のうち、浸透が決壊原因と考えられるのは2箇所のみのレアケースとなっているし、エアブローが提体の強度に与える影響が、科学的に十分に解明されていない状況のなか、透気・防水対策にどこまで対応するかが、今後、河川管理者の判断に委ねられる。
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| 透気・防水性シートの効果のイメージ図 |
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