2018年7月31日火曜日

ジオネットで耐侵食性を向上させる

 越流水が侵食するのは法尻だけではない。最初に法面が侵食されるケースもあることを東京理科大学の実験が証明している。
 
 法面が密度が高い芝で覆われていれば、一定の耐侵食性は期待できるが、ゴルフ場の芝のように管理が行き届かない堤防の芝の密度は一定ではなく、疎らな部分が必ずある。むしろ、密な芝を探す方が難しいくらいである。侵食は疎らな箇所から進む。

 芝の生育が難しい北海道以外の堤防法面には野芝が採用される。芝の根毛に耐侵食性があるからだ。しかし、1mmメッシュののジオネットは芝の根よりも緻密で、耐侵食性が高い。ジオネットに芝の根毛が絡みつくと、流水で根毛が洗堀されにくくなり耐侵食性さらにが向上することになる。

 越水対策として設置された張ブロックの上端から法肩までを、ジオネットで補強すればで耐侵食性が格段に向上することになり、越水による破堤発生まで時間を大幅に延ばすことができる。

 しかも、ジオネットの価格は600円/m2と安価である。
 
 張ブロックの20分の1のコストで、堤防の安全性を大幅に向上させることが可能だ。

2018年7月27日金曜日

張ブロックの小口止めについて

 国土交通省の国土技術政策総合研究所が公表している、「越水による決壊までの時間を少しでも引き延ばす河川堤防天端・のり尻の構造上の工夫に関する検討」では、下の写真のように張ブロック上端部の斜め小口止めの構造を、水理実験で定めている。
 
 この時の前提条件は、芝が斜め小口止めまでびっしりと生えていることとしている。
 実験では、樹脂製の人工芝(下の写真では右上の黒いもの)を使用している。

 ということは逆説的に考えると、斜め小口止め付近に芝が生えていない場合は、洪水流により侵食されるということになる。

 越水対策として法尻に張ブロックを設置した場合は、芝の復旧は当然ながら、それ以外の個所でも芝を健全な状態にしなければ、堤防の侵食が進み、かえって危険度が高まるはずである。

 前述したように、芝を隙間なく生やすことは非常に困難である。

 

2018年7月26日木曜日

堤防の法面が侵食されやすい

 国交省が5箇年計画で整備を進めている危機管理型ハード対策は、堤防の川裏の法尻をブロックで補強するものである。

 しかし、法尻をブロックで補強しても、東京理科大学の実験では法肩に近い箇所の法面が最初に侵食されることが分かっている。これは、河川側から流れ落ちる越流水が最初に衝突する場所だからである。

 法面の侵食が進むと越流水が張ブロックの下側に流れ込む。行き場が無くなった洪水流は周辺を急激に侵食して、堤防の決壊を早めてしまう可能性がある。
 
 下図は2016年2月に作成したものであるが、法肩から法尻ブロックまでの法面の耐侵食性の向上を急ぐ必要がある。

2018年7月25日水曜日

堤防の越水対策の懸念


  越水により堤防が決壊するまでの時間を少しでも延ばし、流域住民が避難できるようにしようと、国土交通省は写真のように裏法尻をブロック等で補強する工事を、平成28年度から開始した。

 5年間で630㎞も整備する。
 
 前述したが、越水による堤防の侵食は法尻だけではない。法肩も同時に侵食されると、河川工学の権威や、過去の災害が証明している。

 しかし、張ブロックによる補強は法尻から2mに限定されている。国土交通省の国総研が、水理実験を繰り返して構造緒元を決定したが、なぜ法尻から2mなのかの科学的根拠は示されていない。法尻から2mするための水理実験をしたとの話も聞いていない。

 越水対策工事が完了した下の写真。張ブロックの上部は埋戻ししたままで、耐侵食性が期待される芝はまだ生えていない。
 
 もし、今、この場所で越水が発生したらどうなるだろうか。
 
 洪水流は堤防の弱い部分から侵食する。埋め戻したままの芝の生えていない箇所は、大丈夫だろうか。越水流で法肩付近の法面が侵食されて、水流が法尻ブロックの下に回り込むことが容易に推測されるのである。
 
 危機管理型ハード対策としての法尻ブロックが、果たして越水に耐えられるのか、とても心配である。

完成した越水対策の法尻ブロック。ブロックの上部が裸地化しているので、もし、越水が発生したら最初に侵食されそうだ。

2018年7月16日月曜日

越水による堤防侵食は法尻だけか?

   堤防の破堤の原因で最も多いのは、越水である。越水が原因と思われる破堤は全体の半数以上といい、ある統計では8割ともいう。

 洪水が越水をすると、最初に侵食されるのはどこか。

 河川工学の中島秀雄氏の「図説 河川堤防」では、法肩と法尻が同時に侵食されて徐々に拡大していくとしている。

 2004年の新潟豪雨の越水破堤でも、中島氏の定説と同様に法肩と法尻が最初に侵食されたとのことである。

  2015年の関東・東北豪雨でも下の写真のように、法肩が侵食された痕跡が残っていた。法肩も法尻も断面形状の変化点である。形状の変化点で浸食や洗掘が起こりやすいということなのだろう。

  東京理科大学が2015年11月17日に、大型水理実験場で行った公開実験の動画がユーチューブで公開されているが、その実験でも、法肩から侵食が始まっているのが分かる。
(ユーチューブの「堤防決壊の公開実験」)
   https://www.youtube.com/watch?v=jiuuj0WcPq4
東京理科大学の越水破堤の実験状況。ユーチューブに動画が掲載されている。



不確実な自然の芝

 上の写真は、施肥や除草などの管理が行き届いている公園の芝生。堤防の芝もこのように管理されていると、洪水で侵食されにくいと思いがちである。

 しかし一見立派そうに見える公園の芝生は下の写真のように、芝は疎らになっていることが多い。

  洪水は、芝生の根が疎らな部分を洗掘する。
 
 ジオネットは疎らな部分はない。工場で造られる均一な目合いなので、耐侵食性が天然の芝生よりも高い。
管理が行き届いて、緻密に生えているように見える公園の芝生。
しかし、接近すると芝が生えていない部分がたくさんある。この状態では洪水に負けてしまう。

2018年7月12日木曜日

ジオネットで堤防の耐侵食性を向上

    堤防に芝を張るのは、芝の根が緻密に組み合って、洪水に対抗できるからだ。
    流速が2m/secまでは洗掘されにくいという。

     ジオネットの1㎜メッシュは芝の根よりも緻密だ。

     国土交通省の元技監の池内幸司氏が、リバーフロント研究所にいた頃の研究で、「植生とシート材を用いた護岸工法に関する実験的研究」では、ジオネットに似たメッシュシートで侵食性の実験をしたところ、流速が3m/secまでは耐えられるという結果だった。

   つまり、芝よりも耐侵食性が高いということになる。
  
   天然の芝の根を、均一で緻密に組み合せた状態に成長させることは困難である。必ずムラができる。根が疎らな部分から洗掘される。

  一方、工場製品であるジオネットは、当然ながら均一性を確保できる製品である。耐久性も半永久的だ。

  リバーフロント研究所の池内氏が、メッシュシートと芝を組み合わせるとの実験によると、流速が5m/secまで耐侵食性が向上したという。
 
  人工的な芝の根であるジオネットは、堤防表面の侵食防止ができ、洪水に強い網だ。

2018年7月4日水曜日

阿武隈川でのイノシシ対策(3)

 イノシシに掘り返されにくいネットは、10㎜と1㎜のどちらか。阿武隈川の堤防で調べる。

 10㎜の目合いのジオグリットや、1㎜の目合いのジオネットを敷いても、イノシシは掘り返して草の根を食べようとして、ネットの上の張芝を鼻でこする。

 イノシシはどうやって穴を掘るか。ユーチューブにイノシシの穴掘りの動画を見ると、鼻を土だらけにして、地面を何度も鼻をこすっている。牙は使わない。

 写真1は10㎜の目合いのジオグリット。ネットが浮き上がるくらいに、ネットの裏側まで掘られている。掘るというよりも、土ごと草の根を器用に吸っているようだ。

 一方、写真2の1㎜のジオネットでは、ネットの裏までは掘られていない。そして、剥がされた野芝の面積も比較的少ない。
 
 さすがに1㎜のネットだと、土も草の根も吸い込むのは難しいということなのだろう。

 


写真1 イノシシが露出させた10㎜のジオグリット。ネットの裏側の土も掘られている。

写真2 1㎜のジオネット。ネットの裏側は掘られていない。

2018年7月3日火曜日

阿武隈川でのイノシシ対策(2)

野芝の下にジオネットを敷き、イノシシ対策の効果を見る。

ポールより下側がジオネットによる対策済みのエリアで、上は未対策のエリア。

未対策部分ではイノシシによる掘り返しの跡が多く見られ、ジオネットの効果がはっきりと確認できた。


丸森町の阿武隈川の堤防。イノシシによる穴が無数にある。(撮影は平成30年2月23日)