2020年3月5日木曜日

耐越水シートの開発②(法肩から侵食が始まるケースもある)

 越水で侵食されるのは川裏の法尻だけではないことを、3年ほど前から警告してきた。

 危機管理型ハード対策で法尻だけをブロックで補強しても、法面や法肩でも侵食されるので対策の見直しが必要であることは、台風19号が来襲する1年以上前から、何度かこのブログでも訴えていた。(2017年の7月頃)

 昨年(令和元年)の秋、台風19号が去ったあと、国交省北上川下流河川事務所が管理する吉田川の上流の善川へ行ってみた。吉田川では越水破堤した箇所があり、多くの家屋が流されたり浸水した。善川では数箇所で堤防の損害が発生していた。

 川の周りは水田が多く、洪水で稲わらが堤防の周りに流れ着いて堆積していた。
 よく見ると、堤防の法肩が侵食されていた。東京理科大学の二瓶研究室で行われた実験と同じ現象が、本物の堤防でも発生していたのである。法尻では侵食は見られなかった。
 越水による川裏の侵食が常に法尻から始まるという定説に基づいて、国交省の治水課は「危機管理型ハード対策」と称して、法尻の2mだけをコンクリートブロックで補強する方針を決めたが、実際は、堤防の土質や植生の状況で法肩や法面も侵食されることが露呈されたのである。

 堤防の越水対策で、最も重要なことは何だろうか。それを考えさせるのがこの写真である。


東京理科大の実験状況

2020年3月4日水曜日

耐越水シートの開発①(越水破堤の原因は何か)

  2019年10月の台風19号で、国が管理する河川が12箇所で決壊した。決壊の原因はすべて越水によるものであったと、国交省の調査委員会が分析している。県が管理している128箇所の堤防の決壊の原因もまた、越水が主原因であった。

 越水による堤防の決壊が注目されている。
 2020年2月24日付けの日経コンストラクションは「消された堤防」というタイトルで、越水破堤に目を背けてはならないことや、危機管理型ハード対策で天端舗装や、法尻ブロックだけでは不十分なこと、越水破堤の防止のために研究が必要なことなどを18頁の紙面をさいて訴えている。

 2015年12月、国土交通省は「危機管理型ハード対策」として、全国の約1800㎞で、堤防の天端の舗装(1310㎞)や、堤防の裏法尻のブロック張工(630㎞)を、2020年度までの5ヶ年で整備することを公表した。
 
 しかし、なぜブロック張を法尻から2mだけに決めたのか、その根拠は示されていなかった。
 また、法尻ブロックの上部の法面には芝がびっしり生えているという条件で、人工芝を敷いて法尻ブロックと裏法の境界部について、耐侵食性の確認の水理実験をしている。
 
 ゴルフ場のように日々手入れをしないと、芝をびっしりと生やすのは難しい。管理が行き届いているように見える公園の芝でさえ、目を凝らして観察すると、地肌だけの部分が多いことに驚く。越水流は地肌などの弱い箇所を集中して洗堀する。

 越水により堤防はどのように侵食されていくのか。
2015年に東京理科大学の二瓶教授が実物大の実験している。実験は天端に舗装が施工されている状態で行われた。法尻が最初に洗堀されると思っていたが、実際は法肩に近い法面からだった。

2020年2月18日火曜日

堤防の強靭化を実施 ③

 ジオネットの重ね合わせ部に、隙間が出ないようにする方法を考える。
 
 ただし、コストアップにならないことが、いちばんの条件になる。
 ジオネットの張り付け作業が、楽になることも重要だ。
 しかも、強度の確保も大切になる。

 そこで思いついたのは、下の写真のようにネット(タキロンシーアイシビル㈱)の端を折り返すことだった。
 ネットを工場で製造する段階で、端を折り曲げておく。これは簡単にできそうだ。

 この形だと隙間ができないので、イタドリの芽が隙間をめざして伸びることはできない。
 強度も向上する。4枚重ねなので、固定ピンの周りから破けることは、あまり考えられない。
 接手はかみ合わせ構造なので、張り付け作業も楽にできそうだ。

 4枚重ねになると、固定ピンが刺さりにくくなると思うが、ハンマーで叩くと意外と簡単に差し込める。
 

 、

2020年1月27日月曜日

堤防の強靭化を実施 ②

イタドリなどの繁殖力は、想像以上に強い。

ジオネットの重ね合わせ部に僅かな隙間がっても、そこからイタドリの芽が伸びだす。
  
ジオネットの重ね合わせ幅を20㎝ほど確保したが、下の写真のように問題なく芽が伸びてしまうので、隙間ができないような工夫が必要である。

隙間を無くす方法は、簡単で低コストであることが望まれる。  
  

ジオネットの隙間から伸びたイタドリの芽 

2020年1月13日月曜日

堤防の強靭化を実施 ①

 昨年(令和元年)の5月、イタドリが繁茂する石狩川と忠別川で、「植生保護シート(ジオネット)」の上に3㎝の客土吹き付けを行う工事が行われた。
 発注者は北海道開発局旭川河川事務所である。
 私が発案したジオネットによる堤防強靭化工事の第1号と第2号である。2件の工事で約2万m2が施工された。

 北海道のイタドリは背丈が3mまで伸び、東北のものよりも一回り大きく成長する。背丈が高くなったイタドリは、除草機の刃の摩耗が激しく除草の効率を下げる。葉っぱの量が多いので、除草量が嵩む原因にもなる。
 牛はイタドリを食べないので、刈草を畜産農家に提供するときには、イタドリを除去しなければならない。
 
 イタドリには、アレロパシー(ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出すること)の能力があるので、イタドリの周辺は裸地化する。草が生えない裸の地面に降雨が当たるとガリ侵食が発生したり、越水流で堤防の地肌が侵食されやすくなる。これが堤防浸食を招くことになる。

 また、イタドリが繁茂する堤防にはモグラも住み着きやすいと言われる。モグラが掘った穴で4年前に宮城県の渋井川が破堤したこともある。堤防の植生管理は重要で、奥が深い。
 
 ジオネットはイタドリの成長を抑制するだけではない。ジオネットは1mm四方に加工された網だが、この密度は野芝の根よりも緻密だ。緻密なジオネットは堤防の法面の侵食を遅らせることができる。モグラも住み着くことはできない。

 ジオネットによる堤防の強靭化が、北海道から始まっている。
北海道の忠別川におけるジオネットの張り付け作業。重ね合わせ部を特殊加工したので、敷設作業がしやすくなった。(2019年5月)

2020年1月6日月曜日

越水による裏法面の洗堀

 台風19号の直後の10月15日、宮城県大郷町の吉田川の支流の善川へ行ってみた。
 下流の吉田川では越水が原因で破堤し、寺や民家が流され大きな災害となった。総理大臣が2度も視察に来るほどだった。
  
 写真は善川の右岸の1.8㎞の堤防。法肩から40~50㎝下がった辺りが、越水で洗堀されている。法尻には侵食の形跡は見られなかった。

 国交省では越水しても破堤に至るまでの時間を少しでも伸ばそうと、5年計画で堤防の裏法面の法尻をブロックで補強する工事を進めている。しかし、善川では法尻ではなく法肩付近が洗堀されていた。

 そこで思い出すのは、東京理科大学の二瓶教授が行った水理実験。
 水理実験と同じような現象が、現場でも発生していた。

 国交省では台風19号の甚大な被害を踏まえ、「気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会」を設け、今年の夏ごろをめどに、検討会を開催し堤防強化の方向性を示す予定である。
 
 堤防決壊の原因の7~8割が越水といわれる。すべての堤防を嵩上げするには膨大な予算が必要で、とても無理かもしれない。
 どのような方針が出されるかが、専門家やマスコミなどから注目されている。
東京理科大学の実物大での越水破堤の実験状況。の裏法面の法肩が深く洗堀されている。

台風19号で善川が越水し、法肩が洗堀されていた。東京理科大学の実験と同様の現象となった。

 

2019年2月5日火曜日

省エネ型ロードヒーティング(スリップ事故防止対策)  ~凍結抑制舗装は路面凍結を防止できるのか?~

 国土交通省北陸地方整備局の北陸技術事務所は、多種多様な11種類の凍結抑制舗装の効果等を検証することを目的に検討会を立ち上げ、平成27年から新潟県長岡市東川口地内の国道17号で調査を続けている。

 公募された11種の次に示す凍結抑制舗装は、すべてNETIS登録されているものである。

① ゴムパウダ型凍結抑制舗装 ((株)佐藤渡辺)
② ザベック工法 (世紀東急工業株)
③ ク゛ルービングウレタン工法 (鹿島道路(株))
④ アイストール (オサダ技研)
⑤ アイスクラッシュベイブ (大成ロテック(株))
⑥ アニメウレタン舗装 (日本道路(株))
⑦ アイスインパクト (福田道路(株))
⑧ ゴムロールド((株)NIPPO)
⑨ ルビット舗装 (大林道路(株))
⑩ アイストッパー (大林道路(株))
⑪ フル・ファンクション・ペーブ ((株) ガイアート)

 凍結抑制舗装には物理系、化学系、物理化学系に分類されるが、地域特性に合致する工法選定の判断資料が少なかったことから、試験フィールドで検証することになった。

 試験はこの11種の凍結抑制舗装と、通常舗装の密粒度アスコンとの比較で行われ、一冬経過した平成27年7月、その中間報告が発表された。

 その結果、通常舗装に比べると凍結しにくいとしている。そして、除雪業者の感想は「少雪時、交通量が多い場合に効果を感じている」とのこと。

 ということは、少雪以外や交通量が少ない時はどうなるのだろうか?

 気になって翌冬、私はCCTVのライブ画像を見てみた。雪がかなり降っていたが(時間降雪深は5㎝ぐらいか)、試験フィールド箇所はどの路面も真っ白のアイスバーンになっていた。

 凍結抑制舗装のうち化学系であれば、混入されている凍結防止剤がある限りは融雪することもありうるが、物理系のものは雪を融かすことができないからだろう。

 なお、各舗装の効果を検証する検討会の最終分析はいまだに未発表となっていて、経過観察がどうなったかは不明となっている。

 機会があれば長岡に出向いて、凍結抑制舗装はアイスバーンを防止できるのか、間近で観察してみたい。


凍結抑制舗装のアイスバーンの防止能力は?