2018年12月24日月曜日

秋田自動車道(日沿道)に導入された省エネ型ロードヒーティング (スリップ事故防止対策)

 秋田自動車道(日沿道)の、大館北IC~小坂北IC(L=16.1㎞)間の4橋に、私が発案し開発した省エネ型ロードヒーティングが導入されたが、そのうちの支根刈沢橋(L=87m)での稼働状況が下の写真。

 撮影は、平成26年(2014年)の1月31日の午前8時40分すぎ。

 積雪深は50㎝を超している。さらに降雪が続いている。
                                          
 橋面にも念のため凍結防止剤を散布しているが、上の写真のように、橋面が殆ど雪に覆われている。凍結防止剤の融雪能力が降雪量に追いつかないとからである。

 しかし、その5分後には、下の写真のように、わだち状に黒い路面が現れる。
 
 

2014年1月31日 午前8時41分の状況。激しい降雪に、橋面の殆どが白くなる。

8時46分の状況。5分間でわだち状に敷かれた電熱線が雪を融かしているのが分かる。

2018年12月12日水曜日

省エネ型ロードヒーティング(スリップ事故防止対策)の効果 

 電熱線をわだち状に配線した、「省エネ型ロードヒーティング」の効果は下の写真のとおり。

 上の写真はロードヒーティングを導入していない日沿道の釈迦内橋。大館市の市街地に近いところにあり、比較的降雪量が少ないが、完全にアイスバーンになっている。この橋が供用されてから3年間で1件のスリップ事故があったという。

 下の大川目沢橋は釈迦内橋から5㎞ほど山間部に入った場所にあり、降雪量が多く気温も低い場所だが、省エネ型ロードヒーティングがわだち状に雪を融かしているのが分かる。

 わだちの中で一際黒く見える部分に、電熱線が埋められている。 どちらも平成25年1月30日の同時刻の状況だ。

 省エネ型ロードヒーティングを導入した4つの橋は、供用後3年経った時点でスリップ事故はまだ発生していない。
 
 
ロードヒーティングが未導入の日沿道の釈迦内橋。橋が冷えているので、降雪量が多いとアイスバーンになりやすい。


ロードヒーティングが稼働している日沿道の大川目沢橋。わだち状に融けている。撮影は上の写真と同時刻だ。 

2018年12月10日月曜日

公道における省エネ型ロードヒーティング(スリップ事故防止対策)の導入

 平成25年11月に開通した秋田自動車道(日沿道)の大館北IC~小坂北IC(L=16.1㎞)は、豪雪地帯にあり寒冷地帯である。

 この区間には5つの橋が配置されている。
 大館市街地に近い釈迦内橋は、トンネルと橋梁が連続していなかったのでロードヒーティングは採用されなかったが、山間部の大茂内沢橋や大川目沢橋、支根刈沢橋、新遠部川橋の4橋に導入されることになった。

 道路のわだち部分だけを暖めるという、前代未聞の発想の超省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティングとも呼ぶ)が、本格的に道路インフラに導入されることになる。

 

2018年12月3日月曜日

局所的な凍結による災害防止に最適な、超省エネ型ロードヒーティング

 近年は異常低温や集中的な大雪による交通障害が多発している。

 平成29年の1月には、米子自動車道の蒜山IC~江府IC簡の、縦断勾配が5%の箇所で凍結が発生し、スリップやスタックで大型車両が立ち往生して45時間も通行止めになった。

 翌月には、新東名高速道路の御殿場ジャンクションの高架橋(鋼床板)の橋面が凍結し、延長9キロ以上の滞留が発生した。

 平成30年1月、首都高の山手トンネル付近の縦断勾配8%の箇所で路面凍結が発生し、スリップした車両の滞留解除に約10時間を要した。

 こうしたことから国土交通省は、石田東生筑波大学名誉教授を委員長とする、「冬期道路交通確保対策検討委員会」を設けて、大雪時の道路交通確保対策の議論をしていて、中間報告が出たところである。

 私が考案した超省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティングとも呼ぶ)の最大の特徴は、既設の橋や道路に簡単に設置でき、しかもコストが従来の1/5て程度で済むこと。

 前述のように橋や急勾配、トンネルの出入り口、急カーブなどのスリップ多発箇所での対策には打って付けの工法と言える。


省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティング)を施工する(2)

 溝の中に電熱線を入れ込んだら、ニチレキ製の「クラックシールNX」を流し込む。

 電熱線の耐熱温度は180℃、クラックシールNXの溶解温度は180~220℃。このままだと、電熱線の被服層が熱で溶けてしまいそうだが、シール材を溝に流し込む時点では冷やされて180℃以下になるので問題ない。

 クラックシールNXは夏の高温時でもべたつかないし、低温時には割れにくいという特質がある。耐候性も他社製品よりも高いし、クッション性もある。

 電熱線はクラックシールに囲まれて保護されるので、破断の可能性が減少することになる。

 この後、表層を舗設し、溝は密閉される。

2018年11月26日月曜日

省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティング)を施工する(1)

 秋田自動車道の大館北IC~小坂北ICは多雪地帯の山岳道路であり、トンネルと橋梁が連続する。計画段階で冬期のスリップ事故やスタックが懸念されていた。

 このため、トンネルの出入り口付近は空気熱ヒートポンプによるロードヒーティングを計画していたが、最も凍結しやすい橋面部ではロードヒーティング導入の予定は無かったことから、急遽、私が考案した、超省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティング)を導入することとなった。

 2013年(平成25年)、大川目沢橋(L=431m)や、大茂内沢橋(L=88m)など合計4橋(総延長718m)に、超省エネ型ロードヒーティングの施工を開始する。

 電熱線の布設は、従来のロードヒーティングのようにパネル状になっていないことから、橋面舗装に溝を掘って入れ込むだけで済む。


カッターでの溝掘りが完了した状況。溝の位置(わだちの位置)を間違えないように注意が必要だ。

溝に電熱線を入れ込んでいるところ。作業は極めて簡単だ。

2018年11月15日木曜日

省エネ型ロードヒーティング  ~電熱線は舗装の変形に耐えられるか~

 ロードヒーティングの故障の第一原因は、舗装の変状に伴う電熱線の破断である。

 「超省エネ型ロードヒーティング」(別名「ライン型ロードヒーティング」)の構造を検討する上で最大の課題は、電熱線が破断しにくい構造を考えることだ。

 電熱線よりも少し広めの溝を掘り、電熱線の周りに適切な可撓性のある瀝青系の舗装用シール材を注入することで、仮に舗装が変形してもシール材が緩衝材として電熱線を守れる構造が求められる。シール材は数種類のものを試験して、最終的に日瀝のクラックシールを選択した。


 写真はシール材がどのように電熱線を保護できているかの実験状況。アスファルト舗装の品質試験で使用される「ホイールトラッキング試験」で検証した。

 「ホイールトラッキング試験」は、60度の高温状態で舗装に車輪を当てて、へこみ量が1㎜になるまでの回数を確認する試験で、5250回目で1㎜に達した。

 「密粒度アスコン(改質Ⅱ型)」と呼ばれる、国道で一般的に採用されている舗装で検証したところ、電熱線への影響は見られず、実用性が見えてきた。

ホイールトラッキング試験の状況。車輪が左右に延々と往復
する。
試験後のサンプル。広い溝と狭い溝とも電熱線への影響は見られない。
 

2018年11月14日水曜日

省エネ型ロードヒーティング(スリップ事故防止対策)  ~舗装に溝を掘~

  新設の橋に、ロードヒーティングの電熱線を布設する作業手順。

  橋の舗装は通常、基層と表層の2層で構成されている。

 写真は、基層に舗装カッターで溝を掘っている状況。日沿道の大館小坂道路の橋梁だ。

 電熱線の太さは約10㎜。溝の幅はそれよりもやや広い12㎜とした。2㎜の余裕は、電熱線の伸縮に対応できるようにするためだ。


電熱線の布設イメージ。溝の中で電熱線が伸縮できるように余裕をもたせる。
 
舗装にカッターで溝を掘る作業。カッターの刃を3枚重ねている。

2018年11月8日木曜日

簡単で安く施工できるロードヒーティング(スリップ事故防止対策)の発案

 従来の発想で、供用中の橋にロードヒーティングを追加設置するのは難しい。少なくとも、橋面舗装はすべて剥がさなければならないし、温水パイプのように太いものは、橋面舗装の中に格納しきれない。

 そこで下のイラストのように、電熱線を布設する方法を考えた。
 舗装カッターで溝掘りをして電熱線を入れ、隙間を瀝青シーリング材で埋める。
 
 これだと、凍りやすい橋からスリップ事故を防止できるかもしれない。

 しかし、どんなシーリング材がいいのか、舗装が流動して電熱線が破断しないようにするためにはどうしたらいいのか、電熱線の間隔はどれくらいか、電熱線の深さはどこがいいのかなど、いろいろな課題が出てくる。

 国土交通省の東北技術事務所の技術課長をしているときだった。

橋梁に簡単で低コストにロードヒーティングを施工するイメージ図

2018年11月7日水曜日

省エネ型ロードヒーティング ~橋は凍結しやすい しかし対策はほとんど取られていない~

 橋は凍結しやすい。 
 特にトンネルと橋梁が連続しているような山岳道路では、橋付近でスリップ事故が起きやすい。
 
 雪や凍結が無いトンネルの中で加速し、そのまま凍っている橋に差しかかって、慌てて減速するからだ。
 
 橋梁は雪が積もり寒風に晒されるので路面凍結しやすい。さらに、除雪で橋の路肩に溜まった雪が、日中解けて凍ることも多い。
 
 道路管理者は橋梁部を重点散布箇所に指定して、凍結防止剤(凍結抑制剤とも呼ばれる)を散布している。しかし、凍結防止剤はマイナス5度以下や、降雪量が毎時2㎝以上になると、効果が大幅に弱まる。トンネルの出口は危険なのである。
 
 東北のごく一部のトンネルの出入り口部では、トンネル湧水やヒートポンプによる温水を循環するロードヒーティングを導入しているが、橋面の凍結防止対策は殆どされていない。

 橋面の舗装の厚さは薄く、温水管を布設しても破損する可能性が高い。そうなると床版コンクリートに埋めるしかないが、あらかじめ床版を通常よりも厚く設計しておかなければならないが、設計者の頭はなかなかそこまでは回っていないのが実情だ。

 橋が完成しスリップ事故が多発してから慌てて対策を検討することになり、「後悔先に立たず」で想像力や配慮が足りなかったことを悔やむ設計者がほとんどで、かくいう自分もまたその一人だ。

日沿道のトンネルの入り口の橋台部のヒーティング。
ヒートポンプによる温水循環で融雪しているが、コストが高いのが難点だ。手前のわだち部の雪が融けている部分が、私が開発した超省エネ型ロードヒーティング(ライン型ロードヒーティングとも呼ばれる)

2018年11月2日金曜日

超省エネ型ロードヒーティングのイメージ

 道路幅全部の雪や氷を融かさなくても、タイヤの幅だけ融かすだけで、スリップの発生は大きく減少する。このことは雪道を走った経験のあるドライバーなら、だれでも知っている。雪道を走るときは、わだちからはみ出ないようにするのが、雪国のドライブの鉄則だ。

 道路一面に圧雪になっている路面に対し、わだちの幅だけでも舗装が出ている路面は運転の安全度は格段に向上する。

 ロードヒーティングの電熱線を下のイメージのように、タイヤの直下に配置する。大型トラックや普通自動車、軽自動車のタイヤ間隔はそれぞれ異なるが、どの車両にも当てはまる間隔を選択する。

 従来のロードヒーティングは、道路の幅いっぱいに横断方向へ「ヘアピン状」に電熱線を配線するが、私が提案する方法だと、わだち部分だけの配線で済む。これでコストが大幅に下がる。また、この方法だと電熱線の真上を連続してタイヤが走行するので、熱のロスは少ない。

 わだちの間に融かせない雪が積もって、車が走れなくなるのではとの疑問をもたれそうであるが、国道の除雪出動基準は路面積雪が5㎝以上なので基準どおりに除雪していれば、わだち間に5㎝以上の積雪は発生しないことになる。それに走行車両が積雪を吹き払ってしまう。ただし、まったく除雪をしない道路では、わだち間の雪が残るのでこの方法は使えない。)

 冬期道路でスタックの発生は、路面凍結によるスリップが主原因である。
 つまり、雪を融かすよりも、凍結路面を防止することがスタック防止に不可欠と言える。
 
 
    従来のロードヒーティングの配線。道路の横断方向に緻密に配線されている
私が発案した超省エネ型ロードヒーティングのイメージ

2018年10月30日火曜日

超省エネ型ロードヒーティング(スリップ事故防止対策)を発案する

 
  最近は、道路の凍結対策としてロードヒーティングを導入するケースがめっきり減った。

 一時、国内では北海道で多く整備されたが、施設の老朽化や膨大な電力料に、徐々に稼働を取りやめる道路管理者が増えた。

 従来のロードヒーティングは、なぜ高コストになるのかを考えた。

 下の写真は今までのロードヒーティングの施工状況である。電熱線や放熱管は道路幅の全部の雪を融かそうと、道路方向に直角にほぼ10㎝ピッチで布設されている。だから、既設の道路を融雪道路にしようとしたら、いったん舗装を剥がさなければならない。これがコストアップの大きな要因だ。

 電熱線をタイヤが接する部分だけ布設したら、どうなるだろうか。

 舗装を道路幅全部で剥がす必要は無くなる。電熱線の延長は短くて済む。

 電熱線の延長が短いと、消費電力が少なくなる。契約量が50㎾を超すと高圧電力になり、キュービクルと呼ばれる高圧受電設備が必要になる。

 キュービクルの価格は200~600万円ぐらいで、メンテナンス費用がかかる。これもコストアップの要因となる。

 わだち状に電熱線を布設すれば、電力料は1/5程度で済むし、高価なキュービクルも不要だ。
 工事も簡単にできる。
 

通常のロードヒーティングの施工状況。電熱線や放熱管は道路の横断方向に、びっしりと布設される。

植樹桝の雑草対策 (その6)

 仙台市太白区役所から許可をもらい、平成30年4月19日に「あすと長町」の市道でも、試験施工を行った。場所は、国土交通省の仙台河川国道事務所の玄関部だ。

 2番目の写真は、6月6日の状況写真。ジオネットを敷いたエリアの周辺では、地下茎植物のイタドリやヨモギが1㍍近くまで生長しているのに対して、実験エリアでは「エノコログサ」が低く生えている。この時点では実験は順調に推移していて、ジオネットの効果が十分だと思った。

 しかし、その後8月ごろに市役所が除草をすると、エノコログサが生長のピークに入り、30㎝程度まで伸びた。エノコログサは通常60㎝程度まで伸びる一年草だが、ジオネットは半分程度に生長を抑制している。(撮影は10月12日)
 
 また、イタドリやヨモギなどの地下茎の多年草は防御できているのも、ジオネットの特徴だ。実験エリアで繁茂するのは、殆どがエノコログサだ。

 ジオネットによる雑草抑制手法では、草丈をゴルフ場の芝のように短くすることはできないが、30㎝程度の草丈に抑制し、除草をしなくても我慢できるレベルにすることを目指している。


 
 

 

2018年10月15日月曜日

植樹桝の雑草対策(その5)

 平成29年8月に試験施工を実施してから1年以上が経過した、国道48号愛子バイパスの植樹桝の状況。
 
 ジオネット(高密度ポリエチレン製の網)を敷いた植樹桝は、一年草のエノコログサで覆われている。草丈は30㎝程度で、除草をしなくても我慢できるぎりぎりの高さ。(上の写真)

 一方、無体策の植樹桝は多年草のメドハギやススキ、ヨモギが繁茂している。草丈は1㍍を超している。(下の写真)

 多年草は地下の根(地下茎)から毎年発芽するので、今までは除草剤を散布するか、年に4~5回も除草するしかなかった。除草剤も除草も毎年継続的に行わなければならない。
 
 しかし、ジオネットによる雑草の生長抑制対策は物理的な方法であり、地下茎から発芽する茎の太さをコントロールすることで、草丈を低くする。

 効果はジオネットが劣化して破断するまで持続する。ジオネットの原材料である高密度ポリエチレンは、補強土壁の表面部にも使用されているほどであり、耐久性が高い。直射日光が当たらなければ半永久的と言われており、価格は500円~600円/m2程度、廉価である。
 
 撮影日はどちらも平成30年10月12日。
ジオネットを敷いた植樹桝。エノコログサをなんとか我慢できるくらいの草丈に抑えられていて、道路の景観を阻害するまでには至っていない。
ジオネットを使用しない植樹桝。ススキやヨモギ、ハギなどの地下茎植物が1m以上に繁茂していて、道路の景観を壊している。

2018年8月30日木曜日

植樹桝の雑草対策(その4)

  道路の植樹桝にジオネットを敷いてから1年後の状況が上の写真。

  対策前は、下の写真のようにメドハギが1m近くまで伸びていたが、対策後には生えなくなった。代わりにエノコログサが生えている。

  エノコログサの草丈は、20~25㎝程度でとどまり、除草しなくても我慢ができる状態である。

  通常の環境だとエノコログサは50㎝以上に伸びるので、ジオネットによる成長抑制効果が発揮されたことになる。
 ジオネットを敷設した植樹桝。雑草を完璧に抑えることはできなかったが、ススキやヨモギ、ハギなどの地下茎植物はコントロールできている。
   ジオネットを使用していない従来の植樹桝。ヨモギやハギなど地下茎植物がはびこっている。

2018年8月26日日曜日

植樹桝の雑草対策(その3)

 ジオネットを敷いたあとに、砂を1㎝程度被せる。これ以上厚く敷くと、覆土の中で雑草が繁茂すると考えた。

 以前も書いたが、雑草は大きく分けて二種類ある。飛んできたり、土の中に混じっている種から発芽して、一年で枯れてしまう「一年草」。エノコログサやブタクサなどが「一年草」。

 一方、ヨモギやイタドリは、地下茎を巡らせて、何年も繁茂する「多年草」だ。

 ジオネットがヨモギやイタドリなどの多年草の成長を抑制できることは、堤防の実験で証明できている。

 問題は、 一年草のエノコログサをどこまでコントロールできるかだ、

2018年8月13日月曜日

植樹桝の雑草対策(その2)

植樹桝の雑草を除草したあと、切り株を除去して平らに均してから、ジオネットを敷く。

ジオネットの端部は、雑草がネットとブロックの隙間から発芽しないようにするため、折り返して「忍び返し」の状態にする。

白い針金は、折り返したジオネットが元に戻らないようにするためのもの。

植樹桝の雑草対策(その1)

 雑草の草丈が1mを超して、景観を阻害しているような植樹桝を、メンテナンスフリーにできないかと実験を開始。

 最初に雑草を除草し、次に雑草の切り株を除去する。切り株が残るとジオネットと地面の間に空間ができて、草が生えにくくなるから。

 切り株を除去しなくても、砂を敷いて平らにする方法もある。平らになればどちらでもかまわない。

  

2018年8月9日木曜日

ジオネットで雑草をコントロールする

  植樹桝や緑地帯の雑草のうち、多年草と呼ばれる地下茎を形成する雑草は、草丈が高くなる。 

  イタドリやヨモギは地下茎で増えていく多年草だ。

  ジオネット(「雑草抑制ネット」タキロンシーアイシビル社製)で多年草であるイタドリの成長を抑制する実験は、国土交通省の秋田河川国道事務所が管理する雄物川の堤防で実証済みだ。

  植樹桝でもこの手法が活用できないだろうか。

  実験方法を下図のようにイメージした。課題はエノコログサなどの一年草が、どこまでコントロールできるかである。

タキロンシーアイシビル社の特許製品「雑草抑制ネット」。材質は高密度ポリエチレンで劣化しにくい。網目のサイズは1mm以下が理想。

この手法は、国交省の北海道開発局の堤防法面で大規模に施工されている。

2018年8月8日水曜日

統一感のある雑草は見栄えがいい

 下の道路の緑地帯(中央分離帯)は、一見すると芝生のように見える。
 
 草丈と草の種類が統一されているので、さも手入れをしている芝生のように見えるの

 だ。この草の丈は30センチほどあるが、雑草らしく見えない。

 メンテナンスフリーの緑地管理のヒントがここにありそうだ。

 ジオネットで草の種類と草丈をコントロールできれば、メンテナンスフリーが実現できそうだ。
中央分離帯の雑草。草丈は30センチほどもあるが、丈と草種が統一されているので、整然として見える。

破れる防草シート

   防草シートのメーカーは数多くあり、様々な製品が販売されている。

  価格は1m2あたりで、300円から1000円程度で、耐用年数は5年から20年ぐらい。

  下の写真の防草シートは、施工後5年経過のもの

 劣化して、風にあおられて破れている。セイタカアワダチソウも隙間から生え出した。

 防草シートは地面に敷いて、アンカーピンで留めるのが一般的。

 一般の防草シートは紫外線で劣化しやすく、強風で捲れ上がることがあるので、しっかりとアンカーピンで留めなければならないが、アンカー付近から破れ出すことが多い。

 シートを目立たなくさせるために、薄く覆土すると風で吹き飛んでしまう。防草シートはメリットもあるが、デメリットも多い。 





2018年8月6日月曜日

防草シートは景観に馴染むのか?

 街で防草シートに覆われた植樹桝や緑地帯を見かけることがある。

 仙台は杜の都と呼ばれるからなのか、人工色の防草シートは、街の景観に合わない。

 いや、どこの街でも、防草シートが似合うはずが無い。

 そもそも、植樹桝や緑地帯は、草花を植える場所。

 それが人工色のシートになってしまうのが、違和感の発生原因だ。

 防草シートで覆うくらいなら、最初から緑地帯は造らなければいいのだ。その辺が不自然なので、違和感が生まれるのだろう。
 
 

仙台市太白区の道路。防草シートで覆われた植樹帯。もともとは草花を植えるために造られた筈だ。

2018年8月3日金曜日

植樹桝の雑草

 国道の多くは街路樹が植えられている。緑が豊かな道路は気持ちがいい。

 しかし、雑草は別。雑草が豊かに茂るほど、荒涼とした景観になっていく。

 手入れが行き届いた庭が清々しいように、道路もきちんと世話をしてくれると景観が保たれる。

 メンテナンスフリーで、雑草が目立たなくなるような方法はないだろうか。

 長い間、道路管理者たちを悩ませてきた課題だ。

植樹桝の雑草。狭いスペースでの除草は予想以上に手間がかかる。

景観を壊す道路の雑草 ~雑草だらけの国道7号~

 道路の除草回数は以前に比べて減ったので、雑草だらけの道路が多くなった。

 維持予算の制約で、国道だけでなく、県道も市町村道も雑草が目立つようになった。

 年に2回除草しても、雑草は写真のように1メートルを超す草丈になる。

 東京オリンピックまで、あと2年。

 海外から訪れる観光客は、こんな景色をどうみるのだろうか。

 

国道の緑地帯。セイタカアワダチソウが群生し、街の景観を阻害している。

2018年7月31日火曜日

ジオネットで耐侵食性を向上させる

 越流水が侵食するのは法尻だけではない。最初に法面が侵食されるケースもあることを東京理科大学の実験が証明している。
 
 法面が密度が高い芝で覆われていれば、一定の耐侵食性は期待できるが、ゴルフ場の芝のように管理が行き届かない堤防の芝の密度は一定ではなく、疎らな部分が必ずある。むしろ、密な芝を探す方が難しいくらいである。侵食は疎らな箇所から進む。

 芝の生育が難しい北海道以外の堤防法面には野芝が採用される。芝の根毛に耐侵食性があるからだ。しかし、1mmメッシュののジオネットは芝の根よりも緻密で、耐侵食性が高い。ジオネットに芝の根毛が絡みつくと、流水で根毛が洗堀されにくくなり耐侵食性さらにが向上することになる。

 越水対策として設置された張ブロックの上端から法肩までを、ジオネットで補強すればで耐侵食性が格段に向上することになり、越水による破堤発生まで時間を大幅に延ばすことができる。

 しかも、ジオネットの価格は600円/m2と安価である。
 
 張ブロックの20分の1のコストで、堤防の安全性を大幅に向上させることが可能だ。

2018年7月27日金曜日

張ブロックの小口止めについて

 国土交通省の国土技術政策総合研究所が公表している、「越水による決壊までの時間を少しでも引き延ばす河川堤防天端・のり尻の構造上の工夫に関する検討」では、下の写真のように張ブロック上端部の斜め小口止めの構造を、水理実験で定めている。
 
 この時の前提条件は、芝が斜め小口止めまでびっしりと生えていることとしている。
 実験では、樹脂製の人工芝(下の写真では右上の黒いもの)を使用している。

 ということは逆説的に考えると、斜め小口止め付近に芝が生えていない場合は、洪水流により侵食されるということになる。

 越水対策として法尻に張ブロックを設置した場合は、芝の復旧は当然ながら、それ以外の個所でも芝を健全な状態にしなければ、堤防の侵食が進み、かえって危険度が高まるはずである。

 前述したように、芝を隙間なく生やすことは非常に困難である。

 

2018年7月26日木曜日

堤防の法面が侵食されやすい

 国交省が5箇年計画で整備を進めている危機管理型ハード対策は、堤防の川裏の法尻をブロックで補強するものである。

 しかし、法尻をブロックで補強しても、東京理科大学の実験では法肩に近い箇所の法面が最初に侵食されることが分かっている。これは、河川側から流れ落ちる越流水が最初に衝突する場所だからである。

 法面の侵食が進むと越流水が張ブロックの下側に流れ込む。行き場が無くなった洪水流は周辺を急激に侵食して、堤防の決壊を早めてしまう可能性がある。
 
 下図は2016年2月に作成したものであるが、法肩から法尻ブロックまでの法面の耐侵食性の向上を急ぐ必要がある。

2018年7月25日水曜日

堤防の越水対策の懸念


  越水により堤防が決壊するまでの時間を少しでも延ばし、流域住民が避難できるようにしようと、国土交通省は写真のように裏法尻をブロック等で補強する工事を、平成28年度から開始した。

 5年間で630㎞も整備する。
 
 前述したが、越水による堤防の侵食は法尻だけではない。法肩も同時に侵食されると、河川工学の権威や、過去の災害が証明している。

 しかし、張ブロックによる補強は法尻から2mに限定されている。国土交通省の国総研が、水理実験を繰り返して構造緒元を決定したが、なぜ法尻から2mなのかの科学的根拠は示されていない。法尻から2mするための水理実験をしたとの話も聞いていない。

 越水対策工事が完了した下の写真。張ブロックの上部は埋戻ししたままで、耐侵食性が期待される芝はまだ生えていない。
 
 もし、今、この場所で越水が発生したらどうなるだろうか。
 
 洪水流は堤防の弱い部分から侵食する。埋め戻したままの芝の生えていない箇所は、大丈夫だろうか。越水流で法肩付近の法面が侵食されて、水流が法尻ブロックの下に回り込むことが容易に推測されるのである。
 
 危機管理型ハード対策としての法尻ブロックが、果たして越水に耐えられるのか、とても心配である。

完成した越水対策の法尻ブロック。ブロックの上部が裸地化しているので、もし、越水が発生したら最初に侵食されそうだ。

2018年7月16日月曜日

越水による堤防侵食は法尻だけか?

   堤防の破堤の原因で最も多いのは、越水である。越水が原因と思われる破堤は全体の半数以上といい、ある統計では8割ともいう。

 洪水が越水をすると、最初に侵食されるのはどこか。

 河川工学の中島秀雄氏の「図説 河川堤防」では、法肩と法尻が同時に侵食されて徐々に拡大していくとしている。

 2004年の新潟豪雨の越水破堤でも、中島氏の定説と同様に法肩と法尻が最初に侵食されたとのことである。

  2015年の関東・東北豪雨でも下の写真のように、法肩が侵食された痕跡が残っていた。法肩も法尻も断面形状の変化点である。形状の変化点で浸食や洗掘が起こりやすいということなのだろう。

  東京理科大学が2015年11月17日に、大型水理実験場で行った公開実験の動画がユーチューブで公開されているが、その実験でも、法肩から侵食が始まっているのが分かる。
(ユーチューブの「堤防決壊の公開実験」)
   https://www.youtube.com/watch?v=jiuuj0WcPq4
東京理科大学の越水破堤の実験状況。ユーチューブに動画が掲載されている。



不確実な自然の芝

 上の写真は、施肥や除草などの管理が行き届いている公園の芝生。堤防の芝もこのように管理されていると、洪水で侵食されにくいと思いがちである。

 しかし一見立派そうに見える公園の芝生は下の写真のように、芝は疎らになっていることが多い。

  洪水は、芝生の根が疎らな部分を洗掘する。
 
 ジオネットは疎らな部分はない。工場で造られる均一な目合いなので、耐侵食性が天然の芝生よりも高い。
管理が行き届いて、緻密に生えているように見える公園の芝生。
しかし、接近すると芝が生えていない部分がたくさんある。この状態では洪水に負けてしまう。

2018年7月12日木曜日

ジオネットで堤防の耐侵食性を向上

    堤防に芝を張るのは、芝の根が緻密に組み合って、洪水に対抗できるからだ。
    流速が2m/secまでは洗掘されにくいという。

     ジオネットの1㎜メッシュは芝の根よりも緻密だ。

     国土交通省の元技監の池内幸司氏が、リバーフロント研究所にいた頃の研究で、「植生とシート材を用いた護岸工法に関する実験的研究」では、ジオネットに似たメッシュシートで侵食性の実験をしたところ、流速が3m/secまでは耐えられるという結果だった。

   つまり、芝よりも耐侵食性が高いということになる。
  
   天然の芝の根を、均一で緻密に組み合せた状態に成長させることは困難である。必ずムラができる。根が疎らな部分から洗掘される。

  一方、工場製品であるジオネットは、当然ながら均一性を確保できる製品である。耐久性も半永久的だ。

  リバーフロント研究所の池内氏が、メッシュシートと芝を組み合わせるとの実験によると、流速が5m/secまで耐侵食性が向上したという。
 
  人工的な芝の根であるジオネットは、堤防表面の侵食防止ができ、洪水に強い網だ。

2018年7月4日水曜日

阿武隈川でのイノシシ対策(3)

 イノシシに掘り返されにくいネットは、10㎜と1㎜のどちらか。阿武隈川の堤防で調べる。

 10㎜の目合いのジオグリットや、1㎜の目合いのジオネットを敷いても、イノシシは掘り返して草の根を食べようとして、ネットの上の張芝を鼻でこする。

 イノシシはどうやって穴を掘るか。ユーチューブにイノシシの穴掘りの動画を見ると、鼻を土だらけにして、地面を何度も鼻をこすっている。牙は使わない。

 写真1は10㎜の目合いのジオグリット。ネットが浮き上がるくらいに、ネットの裏側まで掘られている。掘るというよりも、土ごと草の根を器用に吸っているようだ。

 一方、写真2の1㎜のジオネットでは、ネットの裏までは掘られていない。そして、剥がされた野芝の面積も比較的少ない。
 
 さすがに1㎜のネットだと、土も草の根も吸い込むのは難しいということなのだろう。

 


写真1 イノシシが露出させた10㎜のジオグリット。ネットの裏側の土も掘られている。

写真2 1㎜のジオネット。ネットの裏側は掘られていない。

2018年7月3日火曜日

阿武隈川でのイノシシ対策(2)

野芝の下にジオネットを敷き、イノシシ対策の効果を見る。

ポールより下側がジオネットによる対策済みのエリアで、上は未対策のエリア。

未対策部分ではイノシシによる掘り返しの跡が多く見られ、ジオネットの効果がはっきりと確認できた。


丸森町の阿武隈川の堤防。イノシシによる穴が無数にある。(撮影は平成30年2月23日)

2018年6月29日金曜日

阿武隈川でのイノシシ対策(1)

    ジオネットでイノシシ対策ができないかと、平成29年1月、国土交通省の角田出張所から、私の職場だった秋田河川国道事務所に問い合わせメールがあった。

   そこで、渡良瀬川河川事務所がやっている10㎜の目合いのジオグリットと、私が推奨するジオネットの1㎜メッシュの2種類を試験施工することになった。

 阿武隈川が流れる宮城県丸森町は、近年イノシシ被害が多発している。

  試験施工の対象地は、南斜面の堤防。イノシシの掘り起こしは冬場に多い。餌が枯渇する冬に、日当たりのいい堤防法面を20~30㎝程度掘り起こし、草の根を食べ荒らすという。
 
   写真は施工6ヶ月後の平成29年8月のもの。
 中央部の草丈が低い箇所がネットを敷いた箇所で、草丈は周りよりも大幅に低くなっている。10㎜と1㎜の違いはまだ明確には現れていない。



宮城県丸森町の阿武隈川の堤防。上のポールより下側がネットを敷いた部分。草丈の違いがはっきりと分かる。このままだと除草が不要になり、メンテナンスフリーが実現する。

2018年6月28日木曜日

イノシシ対策と雑草抑制を兼ねる

    国土交通省の渡良瀬川河川事務所管内の堤防では、イノシシによる掘り起こしが多発し対策工事が進められている。

   平成28年度の補正予算で桐生川3.4㎞、渡良瀬川2.0㎞にわたって、樹脂製のネットが布設された。 (詳しく桐生出張所のホームページ「きりゅう 河川通信」を参照)
  http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000696722.pdf 
 この事務所では、その後も継続してジオグリットによる補強対策が行われている。
 
   対策手法は、私が取り組んでいるジオネット(ネトロンシート)によるイタドリなどの雑草抑制対策と同様だが、渡良瀬川で使われているネットは、ジオグリットと呼ばれる補強土壁用の高強度のネットで、目合いは8~10㎜ぐらいである。

  このくらい目合いが広くなると雑草の抑制効果はほとんど無い。あくまでもイノシシ対策だけが目的になっているからだ。

    しかし、どうせならばイノシシ対策と雑草抑制を兼ねた方がベターだ。
  ジオネット(ネトロンシート1㎜メッシュ)は、それが実現できると考えている。

2018年6月25日月曜日

堤防のセイヨウアブラナの対策

    南東北以南の堤防では、春になると菜の花が咲き風物詩となって市民から歓迎されているが、河川管理上では大きな課題になっている。

   セイヨウアブラナ(セイヨウカラシナ)は越冬のための養分を蓄えようと、地中表面にカブ状の根を形成させる。この根が堤防表面の腐葉土化を招き、堤防を弱体化させる。腐葉土化が進むと大量のミミズが発生し、それを餌とするモグラやネズミが住み着き堤防に多くの穴を掘る。

   また、モグラやネズミを餌とするキツネもやってくる。
 
   ブワブワに腐葉土化した堤防表面や、モグラやキツネが堤防を穴だらけにすると、洪水のときに大きな弱点となることが考えられる。河川を管理する国土交通省の職員は、毎年洪水の発生時期前にブワブワや穴がないか点検をしなければならない。
 
  ネトロンシートと呼ばれるジオネット(高密度ポリエチレン製の網)はセイヨウアブラナの生育を阻止してカブ状の根の形成を防止できる。さらに、ネトロンシート(㈱タキロンシーアイシビル)はモグラやキツネの爪よりも硬く強度があるので、これらの動物による穴掘りにも対抗でき、国交省の岩手河川国道事務所や仙台河川国道事務所が管理する河川堤防で試験施工されている。
堤防に掘られたキツネの巣。洪水になると弱点になる。